Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

政策担当者への伝言

公共交通分野のオープンデータ(3)

オープンデータは一般に経済効果があるとされているが、初回に紹介したGPSを使った位置情報のように経済活動に顕著に役立った例は多くない。フランスでは市街地のデータを公開しているが、これは古い町並みを守るという景観保全の意味が大きい。イタリアでは…

公共交通分野のオープンデータ(2)

さて今回の「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」の議論だが、国交省の中間整理概要を見ると2項に「首都圏における情報提供の現状」とある。1項「検討の背景」の最後に2020年の東京オリンピック/パラリンピックのことが書いてあると…

公共交通分野のオープンデータ(1)

最近、国土交通省はICT政策に比較的熱心である。恐らく「官民データ活用推進基本法」の制定をうけてのことだろうが、今度は「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」を開いている。http://www.mlit.go.jp/common/001185914.pdf オープンデ…

片側一車線の高速道路(後編)

徳島には二車線の高速道路は作れない、しかし必要だということで一車線という妥協が生まれたのだろう。元道路局長・技監だった人に聞くと、こういう一車線高速(モドキ)道路はほかにも何箇所かあるそうだ。 橋本行革で省庁再編が起き、国土庁がなくなってし…

片側一車線の高速道路(前編)

徳島県で、痛ましい事故があった。エンジン不調で路肩に停まっていたマイクロバスに、大型トラックが突っ込みマイクロバスはガードレールを破って転落、路上にいた運転手のほか乗客にまで死者が出た。トラックに突き落されたマイクロバスは、大破していて事…

日米交渉から日米連携へ(3/終)

それでは、この大げさな会議でどのような議論がされているか、僕の専門の範囲で紹介しよう。デジタル経済の分野では、それ自身が世界経済発展のための最重要分野であるとの認識がある。しかしインターネットがひとつであるように、国境や関税がなく世界で同…

日米交渉から日米連携へ(2)

会議は実質1日半、初日は朝食会に始まり、午前午後一杯メイン会場(Hall of Flags)で議論をする。2日目はいくつかのテーマ別に分かれた議論に移り、昼前に再びメイン会場に集まって日米産業界の共同文書を採択する。会議の長とそのスタッフたちは、その後…

日米交渉から日米連携へ(1)

トランプ大統領のいう「America First」によって、政府間外交のレベルでは日米交渉が厳しさを増す気配がある。TPPはもちろん、APEC連携についても「多国間交渉はしない。2国間で貿易不均衡を是正する」と米国政府は主張し続けている。まあそういう公…

嘉手納以南の米軍基地

那覇から国道58号線に沿って北へ向かう。安謝(あじゃ)天久(あめく)くらいはともかく、勢理客(じっちゃく)なんか読めないよねと地名を珍しがっているうちに浦添市に入る。「てだこの街浦添」と書いた碑を過ぎると左手に広大なスペースが広がっている。…

公共交通利用促進のカギ(後編)

ある公共交通の専門家が調査したところ、上記のような理由よりももっとバスに乗りたくない事情があることがわかった。それは、「どこに連れて行かれるかわからない」ということ。路線が分かっていれば、1時間に1本でも多少バス停が遠くても乗る、と応える…

公共交通利用促進のカギ(前編)

高齢者の運転による事故が増加傾向で、免許返納のキャンペーンなど張っている自治体もある。免許とクルマを取り上げたあとどうするのかと言えば、公共交通の充実しかないのは自明である。 最近公私にわたって行く事が多くなったヨーロッパの都市では、バスや…

官民データ活用推進基本法(5/終)

この法律は示した方向性は正しいのだけれど、具体的に何が進むかというのが次の課題である。ひとつには「官民データ活用推進戦略会議」を設置(議長は内閣総理大臣)するというのが、次への回答である。基本法はその主旨に沿っていろいろな分野の制度などが…

官民データ活用推進基本法(4)

前回「電子政府」と「オープンデータ」についてコメントしたが、この法律にいう基本的施策には他にもいくつか記述がある。地理的な制約等に基づく利用機会格差の是正、情報システムの規格の整備・互換性確保、国及び地方公共団体の施策の整合性、マイナンバ…

官民データ活用推進基本法(3)

この法律、議論の過程において経団連が「データ利活用のための環境整備を求める」という提言を出している。(2016.7.19) http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/054_gaiyo.pdf この中で、経団連が具体的に求めているのは以下の6点。 ◆紙から電子へ 申請…

官民データ活用推進基本法(2)

この法律で具体的に何が変わるのかというと、実はあまりない。昨日書いたように「基本法」であって大きな方針を示すのが目的だからである。もれ聞く話では、先の個人情報保護法改正にあたり「保護に偏るから法律の名前を個人情報法にしてしまおう」という意…

官民データ活用推進基本法(1)

IR(カジノ)法案、年金法案などで年末までもめた昨年の臨時国会だったが、その隙間を縫うようにして議員立法で提案された「官民データ活用推進基本法」はあっさり成立してしまった。もちろんここに至るまでには経緯があり、この臨時国会に出て来るまでに…

強化される欧州のデータ保護(5/終)

従業員情報だけではなく、機器が吐き出す情報まで「越境」だとめくじら立てられるようになると、BtoB型の日本企業まで困るかもしれないと前回書いた。本項の最後に「越境データ移転」の手段について整理しておこう。 よく聞かれるのが「十分性認定を取る…

強化される欧州のデータ保護(4)

「EU域内の拠点に勤めている従業員の情報を日本に持って帰るのが面倒」くらいの話であれば企業経営に大きなインパクトではないかもしれない。それでも産業界に聞くと「そのくらいの不利益しか聞こえてこない」とメディアや、霞ヶ関の人たちは言う。企業は…

強化される欧州のデータ保護(3)

冒頭述べたように人権意識の高い欧州諸国が、インターネット経済の急激な伸びやAI・IoTに代表される(得体の知れない)技術の進歩とあいまって、市民のプライバシー保護に凝り固まろうとする気持ちは理解できる。しかしEUにも事業者はいて、これらの…

強化される欧州のデータ保護(2)

日本の個人情報保護改正の動機の一つが「海外からまともな個人情報保護が出来ていない国」とのレッテルをはがすことだったことは、以前にも紹介した。個人情報保護委員会という「第三者機関」を作ったのもそのためである。まあ今回の改正ではがせるかどうか…

強化される欧州のデータ保護(1)

ヨーロッパはもともと人権意識が高く、プライバシー保護には神経を尖らせる傾向にある。いわゆる個人情報保護については、日米欧では思想の違いが明白だ。以前日本の個人情報保護法改正についてコメントした最終回に、欧州の状況に触れたが今回はこれを少し…

TPP第14章(後編)

あらためてTPP協定の全容を見てみると、章立ては30ある。データの国境を越える移転を認めるとは限らず、サーバ等の設置場所を規定するかもしれないとした、金融サービスと政府調達は別章になっている。 ◆TPPの章立て(電子商取引に関係深そうなもの) …

TPP第14章(前編)

今日から秋の臨時国会が始まっている。先日の日曜討論での各党幹事長の話を聞いていると、焦点のひとつは「TPPの批准」らしい。TPP(Trans Pacific Partnership)協定は、中小国の批准はそこそこできているが、貿易量の多い日本と米国のどちらが欠けても…

そして2人が残った

文科省の組織的天下りが発覚した騒ぎは、事務次官のクビが即座に飛ぶ官邸の苛烈な措置で当面の収束を見たようだ。官民の癒着は様々な形で日本社会に残っており、納税者から見てムダに思えることが起こっている。これに対し、いくつかの挑戦があった。手法の…

道路公団民営化委員会

天皇陛下の退位を巡る議論が大詰めを迎えているようだ。昨年は8月と9月の「朝まで生TV」が本件に係る議論を2ヵ月連続でやっていたし、同番組の元旦スペシャルでもひとつの主要議題になった。正直言って僕の全く知らない世界なのでコメントできるはずも…

GPS捜査、新たな立法へ?

連続窃盗事件の捜査にあたり、容疑者の車などに捜査陣がGPS端末を取り付けて追跡していた件について、最高裁の判断は「違法」だった。1審は容疑者のプライバシーを侵害する恐れを指摘して、当該捜査法は令状を必要とする「強制捜査」であるとし、2審は「任…

Cyber WHOという発想

世界中でサイバー攻撃による被害が拡大していることは、よく知られている。ウクライナで大規模停電が起き、一昨年の攻撃よりも昨年の攻撃の方が進化しているという話もある。今年の5月から6月にかけて世界中で、「Wannacry」というランザムウェアが暴れま…

サイバーセキュリティの橋渡し人材(4/終)

最後に、先日米国企業とこのような人材について会話したことを紹介しよう。サイバーセキュリティのコンサルや人材育成トレーニングも手がけるこの会社、要員の多くは軍経験者のようだ。金髪クルーカットで、ドルフ・ラングレンをスリムにしたようなお兄さん…

サイバーセキュリティの橋渡し人材(3)

政府発表の「橋渡し人材」についてはあまり細かな定義はないようだが、民間の研究組織「産業横断人材育成検討会」は、昨年サイバーセキュリティに関する「人材定義リファレンス」を公表している。 http://cyber-risk.or.jp/sansanren/ かなり精緻なものだが…

サイバーセキュリティの橋渡し人材(2)

さてその「橋渡し人材」の育成が難しい理由だが、専門技術の理解と当該組織の業務、組織マネジメントの能力と3つを備えるべきことにある。組織マネジメントは相応の立場で組織を仕切った経験によって得られることであり、当該組織の業務もある程度その組織…