Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

公共交通分野のオープンデータ(3)

 オープンデータは一般に経済効果があるとされているが、初回に紹介したGPSを使った位置情報のように経済活動に顕著に役立った例は多くない。フランスでは市街地のデータを公開しているが、これは古い町並みを守るという景観保全の意味が大きい。イタリアでは樹木の情報が公開されていて、公共のものか私有なのかが分かるようになっている街がある。公共の樹なら実をもいで食べてもいいということらしく、食い意地は満たせても経済効果といえるかどうかは疑問だ。

 また純粋に公共部門の情報だけでは不十分で、民間が持っている情報こそが意味があるという意見も多い。社会インフラの多くを民間企業が担っている日本の事情を見れば、確かに民間企業の情報が社会全体に役立つと言える。今回の議論、国交省の意図は「オリンピックに向けて首都圏の交通事業者の持つ情報を活用するため、オープンデータの枠組みに民間交通事業者を巻き込むこと」だったように思う。

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 そういう意味で先行しているのは、東京メトロである。公共交通オープンデータ協議会というものが、2015年に発足していて東京メトロは理事会社のひとつとして協議会をリードしている。

http://www.odpt.org/

 東京メトロは駅の構造(例:トイレの位置やそこに至るスロープの角度)をかなり精緻に公開し、リアルタイムに近い列車の運行情報も開示している。さらにデータ利用のコンテストも行い、賞金も出した。交通事業者側が思いつかないアイデアもいくつか発掘されたという。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/689437.html

 国交省としては、他の(首都圏の)公共交通事業者が東京メトロ並みのオープンデータ施策を実施してくれて、各社が相互に情報を活用したり統合されたデータでより利用者に使いやすいアプリケーションが開発されることを期待しているのだろう。オリンピックが無くても急増しつつある外国人旅行社対応も、各社が翻訳に汗を流すよりオープン化して誰かがサービスとして多言語化してくれる方が合理的である。

<続く>