Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

官民データ活用推進基本法(4)

 前回「電子政府」と「オープンデータ」についてコメントしたが、この法律にいう基本的施策には他にもいくつか記述がある。地理的な制約等に基づく利用機会格差の是正、情報システムの規格の整備・互換性確保、国及び地方公共団体の施策の整合性、マイナンバーカードの利用、研究開発の推進、人材育成、教育振興・普及啓発などは、ある意味当たり前のことである。

 まあそれがなかなかできていないのでここにも書いたというくらいの意味だが、霞ヶ関内の論理では非常に重要なことである。例えば研究開発の促進・人材育成では、このために文科省はじめ次年度予算を追加しようとする動きは当然出てくる。新しい法律ができたので、その主旨を汲んで追加しますよというわけ。ネット環境の利用格差是正は、地方へのブロードバンドやWiFi普及と読み替えられるから総務省は何かするだろう。

 基本的政策の中でひとつだけコメントして置くべきことは、「官民データの円滑な流通を促進するため、データ流通における個人の関与の仕組みの構築等」とある部分。これは個人情報の活用・共有・流通について、「自分の情報が勝手に方々で使われているぞ。どうしてくれる!」という市民の懸念と個人情報を有効活用したい事業者等との間をとりもつ「仕組み」のことである。かつて、ICカード乗車券のデータを流通させようとして「炎上」してしまった企業の話もある。

 

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 こういうことなく「個人情報でも的確な措置をして利用すれば、個人に迷惑をかけずに社会全体の役に立てる」ようにしようと、政府も考えているわけだ。さて、これを具体的にどういう「仕組み」にするかはなかなか難しい。過去にあった議論をいくつか思い出してみると、

 ・自分の情報がどこでどう使われているかを自ら知って、場合によっては差し止め
  られる(セルフコントロール)こと。
 ・自分の情報の利用で企業・団体・政府等社会になんらかの効果があったら、自分に
  応分のリターンがあること。

 のようなものがあった。理屈としては納得できるのだが、情報がどこでどう使われているか効果はどれだけあったかが簡単に分かるような気はしない。今後この「仕組み」については、議論が続くことだろう。

<続く>