Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

GPS捜査、新たな立法へ?

 連続窃盗事件の捜査にあたり、容疑者の車などに捜査陣がGPS端末を取り付けて追跡していた件について、最高裁の判断は「違法」だった。1審は容疑者のプライバシーを侵害する恐れを指摘して、当該捜査法は令状を必要とする「強制捜査」であるとし、2審は「任意捜査」の範疇だとして控訴を棄却していた。類似の裁判はいくつも行われていて、これまでの判断は分かれている。今回が最初の最高裁判断となった。ちなみに窃盗の罪そのものは認められ、有罪は確定した。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031500832&g=soc

 「法とコンピュータ学会」という研究者の集まりがあり何度か呼ばれたこともあるのだが、こういうテーマは法曹界ではマイナーらしい。IoTだAIだと多くの業界がデジタル革命を半ば恐れながら受け入れようとしているのに、いまだにアナログ文化が幅を利かせているところである。ひょっとすると法曹界は「最後のアナログ砦」ではないかとさえ思う。

 僕が注目したのは、最高裁が「新たな立法措置が望ましい」と付け加えたこと。現行の法律ではカバーできない捜査の方法が出てきたし、今後も増えていくだろうが、立法府はその対処をしていないという批判にも聞こえる。司法は立法府が定めた法制の枠内で判断をするので、これ以上は手が出ませんよというわけだ。行政府(霞ヶ関)が汗をかかないと立法できないという現状は何度か紹介したが、三権分立というのはことほどさように難しい。

 立法府の皆さんにお願いしたいのは、凶悪犯罪や組織犯罪(たとえば「組織犯罪防止法改正案」で対象としている罪)に限ってでもいいから、デジタル捜査の可能性を広げて欲しいこと。GPSなんか付けなくても、容疑者のスマホに「桜の代紋」のついたマルウェアを忍ばせれば位置情報などもどんどん取れるはず。もちろん乱用は困るので、裁判所の令状を前提に。そして司法にお願いしたいのは、可能な限り迅速に新しい捜査方法を、吟味の上認めて欲しいことである。


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 人手不足の日本、そのうち警察官も充足できなくなるだろうからデジタル捜査は必須と思うのだが。法曹界があまり判断を遅らせていると、裁判官業務をAIで代替しろという意見も出てきますよ。
 
<初出:2017.3>