Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

TPP第14章(前編)

 今日から秋の臨時国会が始まっている。先日の日曜討論での各党幹事長の話を聞いていると、焦点のひとつは「TPPの批准」らしい。TPP(Trans Pacific Partnership)協定は、中小国の批准はそこそこできているが、貿易量の多い日本と米国のどちらが欠けても発効しない仕組みになっている。

 オバマ大統領は当然米国の批准に前向きだが、彼の任期は長くない。年末までのいわゆる「レームダック期間」に素早く議会を通してしまうことができるか、注目されている。トランプ候補はもちろんクリントン候補も「今のTPPには賛成できない」と言っている。雇用を奪いかねないTPPにもろ手を挙げて賛成では、選挙を戦えないということであろう。

 安倍総理は今回の訪米で、日本は速やかに批准すると先方に伝えたかもしれない。米国に対する協力姿勢を示すことと、自らの政権基盤が磐石であることを示すことができるからだ。よって、臨時国会の焦点にTPPが浮上しているのだろう。当然民進党らは「十分な情報開示がなく、拙速は良くない。なぜ今急いで批准するのか。米国だって批准できると思えない」と反対の意を唱える。

 以前紹介したが、我々ICT屋としてはTPPの第14章「電子商取引」につぎのような記述があることを歓迎している。

第14章 11条 情報の電子的手段による国境を越える移転
 2 各締結国は、対象者の事業の実施のために行われる場合には、情報の電子的手段による国境を越える移転を許可する。

第14章 13条 コンピュータ関連設備の設置
 2 いずれの締結国も、自国の領域において事業を遂行するための条件として、対象者に対し、当該領域においてコンピュータ関連設備を利用し、又は設置することを要求してはならない。

 ただこの章の記述にはいくつかの制約が課せられていて、全てのケースで国境を越える移転を認め、サーバ等の設置を義務付けないわけではない。
 

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第14章 1条 定義
  「対象者」とはつぎのものをいう。(中略)ただし、締結国の金融機関又は国境を越えて金融サービスを提供する締結国のサービス提供者を含まない。

第14章 2条 適用範囲及び一般規定
 3 この章の規定は、次のものについては適用しない。 (a)政府調達

 要するに金融サービス分野や政府調達に関しては、データの国境を越える移転を認めるとは限らず、サーバ等の設置を義務付けることはあると言っているわけ。

<続く>