Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

公共交通分野のオープンデータ(1)

 最近、国土交通省はICT政策に比較的熱心である。恐らく「官民データ活用推進基本法」の制定をうけてのことだろうが、今度は「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」を開いている。

http://www.mlit.go.jp/common/001185914.pdf

 オープンデータというのは、政府など公共部門が持っているデータを民間に開放して経済活動につなげたり、社会の利便性向上に活かしたりしようというものである。代表的なものとしては、米国クリントン政権が行ったGPSの民間活用(位置情報がOpenになった)や、オバマ政権のクスリ情報などの開放(e.gov)がある。

 

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 米国に対して日本の政府は、上記に匹敵するデータの民間開放やそれに伴う経済効果を生んでいないという指摘がある。それそのものは正しいのだが、両国のメンタリティの違いも考慮しないとフェアではない。
 
 日本はかつて「民には知らしむべからず、拠らしむべし」という徳川幕府の統治政策に代表されるように中央で情報管理をしたがる傾向があり、市民も「おかみ任せ」で済ませようとするきらいがある。一方米国は、少なくとも建前は「民主主義」の国だ。政府と市民が同等の情報を持つことが、民主主義の基本であるという意見は根強い。従ってオープンデータは民主主義の根幹だと、民主原理主義者は言う。
 
 オープンデータの議論では、いくつもの普遍的な課題が提示される。ひとつにはプライバシー保護をどう徹底させるかであり、もうひとつはデータの整理や公開手続きなどに関わるコスト負担をどうするかである。米国では、後者の課題については「オープンデータは政府の義務であり市民の権利」という声があるので、税金を投入しやすい面がある。

 そんな中で「官民データ活用推進基本法」の意思を汲んで、国交省がオープンデータに取組もうというのは興味深い。数年前に経団連は参加企業にアンケートをして「公共データの産業利用に関する調査」をした。その主なものに、

(1)地図や地下データ
(2)交通データ
(3)防災・保安・安全に関するデータ

 が挙げられていて、これらはいずれも同省管轄のものである。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/020_gaiyo.pdf

<続く>