この法律は示した方向性は正しいのだけれど、具体的に何が進むかというのが次の課題である。ひとつには「官民データ活用推進戦略会議」を設置(議長は内閣総理大臣)するというのが、次への回答である。基本法はその主旨に沿っていろいろな分野の制度などが変更になり、データ活用が盛んにならないとその目的を果たせない。このような制度改革などには個別法の改正を促さなくてはならず、現時点では「当課が何かするべきことではない」とタカをくくっている各省原課を動かせるかどうかに真価がかかっている。
データ活用の難しいのは、その分野・範囲・業種・業界・企業などによって事情が全く異なることだろう。従ってある程度具体的な分野などを絞って、そこでどんなデータが求められどう活用すれば誰が嬉しくなるのかを踏まえた議論が必要になる。全部の分野で一斉にという議論は無理だし非効率だから、まずは産業界が経済合理性から「ここでやりましょう」という分野をいくつか選ぶべきである。
http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2017/0216_01.html
Society5.0というのは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5段階の社会、“超スマート社会”として掲げられた政府方針だが、スマート社会のためにはデータ活用が必要なのは自明である。この提言には、5つの行動計画が書いてある。
1.都市 都市活動のデジタル化や最適化を進め、快適性・経済性・安全性を
兼ね備えた新しい都市の創造。
まだ具体的ではないが、「官民データ活用推進戦略会議」はこれらの分野をどうスマート化するかの議論を始め、産業界にもっと具体的な分析や提案をするように求めるべきだろう。そこから、この法律を活かした「スマート社会」がやってくると信じて。
2.地方 農業、保育、防災等地域共通の重点領域での社会基盤を作り、人と
自然が共生し、自律的に成長する豊かな地域社会を実現。
3.モノ・コト・サービス 全体最適化された「モノ・コト・サービス」づくり
の基盤を構築し、産業競争力を強化し人々の生活の質を向上。
4.インフラ 建築土木分野を中心にデジタル化を進め、強靭で持続可能な
インフラや国土を形成。
5.サイバー空間 データ流通基盤やセキュリティ基盤の整備等によって、
データの安全・安心・効果的な活用を推進。
まだ具体的ではないが、「官民データ活用推進戦略会議」はこれらの分野をどうスマート化するかの議論を始め、産業界にもっと具体的な分析や提案をするように求めるべきだろう。そこから、この法律を活かした「スマート社会」がやってくると信じて。
<初出:2017.4>