Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日米交渉から日米連携へ(1)

 トランプ大統領のいう「America First」によって、政府間外交のレベルでは日米交渉が厳しさを増す気配がある。TPPはもちろん、APEC連携についても「多国間交渉はしない。2国間で貿易不均衡を是正する」と米国政府は主張し続けている。まあそういう公約で大統領が選ばれたのだから、仕方ないことではある。

 
 しかし民間では経済関係が複雑さを増していて、単純にA国がダンピングしてB国が被害を受けているというものは少なくなっている。中国の対米貿易黒字だって、その多くは米国企業が生み出したものだとも言う。米韓FTAで関税がなくなって、韓国自動車メーカーは確かに困ったのだが、なだれ込んできたのはフォードやGM車よりも、米国産のトヨタやホンダ車が多かった。
 
 貿易そのものが多国間になっているので、本来は交渉も多国間ですべきであろう。経済界はそんなことは分かっているから、米国企業といえど本音では多国間交渉を支持しているし、できれば世界中の国境・関税を撤廃し、各国の規制などのルールをハーモナイズさせてほしいと思っている。
 
 そんな中、日米間の業界団体の大掛かりな会合がワシントンDCであった。場所はホワイトハウスの北側のラファイエット広場からHストリートをわたったところ、全米商工会議所である。

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 この会議の歴史は古く、かつては「日米繊維交渉」や「日米半導体交渉」がそのテーマだったと思われる。これらの交渉には両国政府だけでなく、民間産業界も参加していたはずだから。この場でも白熱した議論があったに違いない。ただ、このころの会議の目的は「ゼロサム・ゲーム」でどちらがどれだけ獲得するかという、まさに2国間交渉だった。
 
 しかし今回参加してみると、すでに日米連携の議論になりつつあるような気がした。つまり日米の産業界が一緒になって、第三国に売り込みをかける。これをどうしようか、両国政府にそのためにどう働いてもらおうか、という議論が少しは感じられた。
 
<続く>