Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

政策担当者への伝言

走狗煮ラル(4/終)

「狡兎死して走狗煮らる」というのは、決して血なまぐさい物語にだけ出てくる話ではない。僕の業界にもあることだ。例えば、リスクマンジメント系のソリューションを見ていると、この言葉が妙に納得できる。 米国でエンロンやワールドコムといった会社が不正…

走狗煮ラル(3)

日本史で似たようなことを探すと、最初に思いつくのは源義経。木曽義仲を破り、一ノ谷・屋島・壇ノ浦の合戦で勝利し平氏を滅ぼした伝説の戦術指揮官である。日本史で初めての「幕府」の開設には、欠くことのできない人物だったことは疑いが無い。しかし本当…

走狗煮ラル(2)

前回「走狗」がウサギがいなくなる危機に直面したら、というケーススタディをしてみた。賢い「走狗」はもう少し前から考える。つまり、ウサギ討伐に手心を加えてこれを延命させるのだ。例えば「死せる孔明、生ける仲達を走らす」という故事がある。蜀の宰相…

走狗煮ラル(1)

やっぱり犬も食用だったのね、と思うがそれは今回の本題ではない。この言葉は、史記の呉と越の争いの時代に出てくる。有能な将軍は戦時には貴重なものだが、平時になると不要でクビになるということ。クビでは済まずに本当に首を取られるケースの方が多いか…

中国のサイバーセキュリティ政策(後編)

前編でも中国のサイバーセキュリティ法のネットワーク運営者の義務等についてコメントしたが、後編は残りの部分。(5)重要情報インフラの運営者は、重要データを中国国内に保存しなければならない。 典型的な「Forced Localization」である。重要情報イン…

中国のサイバーセキュリティ政策(前編)

オバマ政権の頃ならば、米国はインターネットの自由を守る国、中国(&ロシア)は自由を認めずネットを監視するのが当たり前の国、と区分できていた。しかし今年のダボス会議で中国の習主席が自由貿易を支持、トランプ発言などを念頭に置いた保護主義への警…

プロスポーツのビッグデータ

"Big Data" という言葉は、出てきた頃から胡散臭いと思っていた。プロセッサやストレージなどのカナモノを製造販売している狭義のICT産業は、5年で10倍の性能向上という激しい競争社会で生きている。彼らのすべきことは、5年で1/10になりかねない市場…

自動車情報の活用(6/終)

最後にクルマのデータを使って、行政の役に立てる可能性を述べよう。初回に紹介した「バス・トラック等のデータを収集する」ことは、大きな事故を防ぐ効果が期待できる。これを僕が思った背景は、現在いろいろな団体・企業が保有しているデータの活用だけで…

自動車情報の活用(5)

次は中古車・中古部品等の販売事業である。「クルマの戸籍」を整備して"Car Fax" のようなシステムを構築しておけば、重大な事故や水没だけでなく、日々のメンテナンスや稼働状況も記録しておける。これによって、クルマの現在価値が中古車市場に出る前から…

自動車情報の活用(4)

次は車検・整備・部品販売等の事業について。保険の代理店業も含めてこれらの事業はひとつの会社で全部やっている例も多い。まず車検だが、これは法で定められていること。しかしリアルタイムで稼動データが入ってくるようになったら、定期点検を課す必要が…

自動車情報の活用(3)

次の例は、自動車保険への適用である。日本でも、実際の走行距離や運転の仕方によって保険料を変えるタイプの損害保険(テレマティクス保険という)がちらほら出始めている。どうやって実際の運転状況を知るかというと、いくつか方法がある。 北アメリカで自…

自動車情報の活用(2)

まず一般の乗用車ではない、特殊車両の例を見てみよう。代表的なものは建設機械。JR小松駅の前には、コマツ製の大型ダンプトラックが展示してあって、タイヤの直径が5mはあろうかという巨大さに圧倒される。昨今はやりの「自動運転」機能はすでに備えてい…

自動車情報の活用(1)

国交省がトラックやバスの運行情報を収集して安全を守る方針を示したとする報道があった。確かに深夜バスが、関越道で側壁に突き刺さった事故や、軽井沢での暴走転落事故などで多くの人命が失われている。これらの例では(少子高齢化の日本で)、若い人が犠…

Cross Border DATA Flows(5/終)

"Forced Localization" という問題のなかでも、"Server Localization" とか"Data Localization" という問題について前回まで述べてきた。なかなかに根深い問題だし、製品輸出に関する他の問題(ソースコード開示等)ほど、注目が集まっていない。特に日本で…

Cross Border DATA Flows(4)

インターネットは「世界インフラ」だし、クラウド技術によってデータは「勝手に」国境を越えていくし、"Cross Border DATA Flows" を妨げようと言ったって現実的じゃないでしょう、というのが僕の正直な思いだ。ところが国によっては、いろいろなことを仕掛…

Cross Border DATA Flows(3)

クラウドとかRAIDとかいう新しい技術によって「勝手に」位置が変わってしまうデータのことを、前2回にわたって書いた。もうひとつの側面として、もともと場所は決まっていたという話を紹介したい。 現在はこの規定はないようなのだが、税関係の法規には、昔…

Cross Border DATA Flows(2)

「勝手に国境を越えるデータ」については、さまざまな意見があるようだ。ただ、この手の問題はずっと以前からあった。RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)のディスクというものが開発されたのは、1990年ころだったと思う。 https://ja.wikipedia.…

Cross Border DATA Flows(1)

以前Googleがデータセンターの電力を丸々オフにして、そのデータとタスクを丸ごと他の遠く離れたデータセンターに移す荒業をご紹介した。ITを使って何らかのタスクをすることは、地理的・物理的要素から徐々に離れていったのをご理解いただけたかと思う。 …

デフレの正体、NINJA編

デフレの克服が安部政権の第一目標だとして、政権も4年目になっている。日銀がGDP成長目標を掲げて金融緩和をし、円安になって輸出型産業から企業業績は改善した。ではデフレは止まったのか、というとそうも言い切れない。豪華な食事のイメージがあるビ…

無体財物の法的価値

ヒト・モノ・カネは、企業経営の3必須要素である。最近は、これに情報を加えて4要素になってきた。企業の機密情報が盗まれたとか、情報漏えいしたとか、情報にまつわる犯罪報道も増えて来た。さて、それでは情報を盗んだらどんな罪に問われるのか?意外と…

デジタル産業の宿命

IT業界は、技術革新が他の産業にもまして激しい。学生時代含めて40年、ここで暮らしているとそれを実感する。ムーアの法則(集積回路上の論理素子の数は、1年半で2倍になる)は、半導体技術の成長の早さを示している。ただ、コンピュータは半導体だけで…