Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

無体財物の法的価値

 ヒト・モノ・カネは、企業経営の3必須要素である。最近は、これに情報を加えて4要素になってきた。企業の機密情報が盗まれたとか、情報漏えいしたとか、情報にまつわる犯罪報道も増えて来た。さて、それでは情報を盗んだらどんな罪に問われるのか?意外とご存じない方が多い。

 2014年のベネッセ事件。この場合、容疑者は不正競争防止法で告発されている。情報を盗んだことではなく、情報を名簿屋に転売して、不公正なビジネスをしたということらしい。このほか、不正アクセス禁止法著作権法などが考えられる。あるいは情報を格納していたUSBやCDなどの「物」の窃盗とすることも。今回の改正で、個人情報保護法も候補に上るようになった。

 しかし、そもそも情報を盗んだのだから「情報窃盗」じゃないのか、と考えて調べてみた。民法は「財」は「物」であるという考え方で成り立っている。情報は「物」ではないので「財」ではなく、盗んで罰せられる対象にはなっていない。刑法はというと、同様に「物」でないものの盗難は考慮していないが、ひとつだけ例外がある。それは「電力」である。盗電は窃盗なのだ。
 

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 古来「情報を制する者、世界を制す」という。そのように一番大事なものが法制度上守られていない、とは驚きである。それって、日本だけのことだろうかと思い国際法のセンセイと話した。日本は特別ではなく「無体財物という概念はあるが、無体なので占有権は認められない」とのこと。情報窃盗罪の創設には否定的だ。

 ただ、某所の研究会で面白い話を聞いた。欧州(特にフランス)で、情報が「財」なのではないかとの議論が起きているらしい。米国でも、同様の論文が出たとのこと。安部内閣のIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」も、先月の改定で4年目を迎える。そろそろ世界最先端で「デジタル時代の法体系」見直しをして欲しいものである。
 
<初出:2016.6>