Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

自動車情報の活用(5)

 次は中古車・中古部品等の販売事業である。「クルマの戸籍」を整備して"Car Fax" のようなシステムを構築しておけば、重大な事故や水没だけでなく、日々のメンテナンスや稼働状況も記録しておける。これによって、クルマの現在価値が中古車市場に出る前から計測できるだろう。これは、個人や企業の時価会計的資産管理として意味があることだ。

 中古車販売業者に聞くと、クルマそのものの履歴だけではなく重要な部品も履歴があるなら嬉しいと言う。代表的なのは「電池」。ハイブリッドカーの普及が進み、すでに多くの中古車が出回っているのだが電池の性能に大きな差異が見られるらしい。リチウムイオン二次電池は充放電の繰り返しに強いのが特徴だが、それでも使い方によって性能の劣化度合いが違い、これが従来のメカ部品と違う特性を持っているのが悩みのタネである。

 おまけに電池は比較的容易に載せ換えが効くので、同じ型式・年代・走行距離のハイブリッドカーを並べても実際の使い勝手には差が出てしまい、どこまで値段に反映していいか判断が難しい。だから電池は別売的に扱ってしまう方法も魅力的で、このばあい電池の履歴があると助かるという。この話は今後電気自動車が本格普及してくると、より大きな意味を持つだろう。

 ドイツではクラシックカーの部品市場が大きく、希少な部品は高値で取引される。日本でもこのような市場を作りたいという人たちがいて、「部品の戸籍」があれば市場形成・活性化に役立つことは間違いはない。ただ、これについては着手以前に費用対効果の検証が必要だろう。以下に高値で取引されるといっても、全体の市場規模がさほど大きくなるように思えない。この分野やネットオークションに任せてもいいのでは、と考えている。

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 ここでひとつテクニカルな課題を揚げておこう。前々回にとりあげたOBD端子についてだが、これに差し込むプラグとデータを吸い上げる仕組みのことを「スキャンツール」という。これが、各自動車メーカーで標準化されていないというのが情報活用の前に立ちふさがるプラクティカルな課題だ。

 スキャンツールの普及が始まったのは、見た目には不具合を検知できない排ガスの悪化を知るためだったらしい。その後いろいろな機能が追加されて、アンチロック・ブレーキの安全装置からの情報読み取りなどの基本機能は整備された。そこまではどのメーカーでも用意しているのだが、その後開発・普及した電子制御指揮スピードリミッターや衝突被害軽減ブレーキなどの新機能はサポートしている場合とそうでない場合がある。

 このままではデータを吸い上げてもメーカー毎車種毎でデータ仕様が異なり、相互利用ができない可能性もある。そこで国交省では「汎用スキャンツール」を開発して、データの標準化を図るとしている。

<続く>