Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

走狗煮ラル(1)

 やっぱり犬も食用だったのね、と思うがそれは今回の本題ではない。この言葉は、史記の呉と越の争いの時代に出てくる。有能な将軍は戦時には貴重なものだが、平時になると不要でクビになるということ。クビでは済まずに本当に首を取られるケースの方が多いかもしれない。中国史に造詣深い作家の田中芳樹が「中国史一番の名将」と評した南宋の将軍岳飛も、金との講和交渉の邪魔になるとして謀殺されている。

 陳舜臣「中国の歴史」「小説十八史略」を読むと、1章1節ごとにこういうシーンが出てくる。紛争や脅威があると軍備を整えるのは当然だが、軍備というのはカネを喰うし一般に再生産に寄与しない。できれば軍縮して、それに充てていた資源を再生産可能な産業に振り向けることが望ましい。だから、軍拡の時期と軍縮の時期は「あざなえる縄のように」交互にやってくる。
 

    f:id:nicky-akira:20190409214812j:plain



 また、覇者にとって「走狗」はライバルやそのタマゴであったりする。覇者自らが昔は「走狗」だったことも多く、いつかとって替わられるのではと恐れると「早々に煮て」しまうことになる。さて「走狗」の立場からすると、ウサギがいなくなりそうになったらどうするか?

 ①ひたすら恭順し「命ばかりは・・・」とひれ伏す。引退するとか、軍を解散してしまうというのもこの類。

 ②覇者の手の届かないところまで逃げる。あわよくば、逃げた先で小なりといえど王朝を開く。

 ③やられる前に先制攻撃。覇者をだまし討ちにするなどして、とって替わる。

 大人しく「煮らる」というのもあるかもしれないが、特別な事情が無い限りそれは覚悟というより無能に近いように思う。

<続く>