国交省がトラックやバスの運行情報を収集して安全を守る方針を示したとする報道があった。確かに深夜バスが、関越道で側壁に突き刺さった事故や、軽井沢での暴走転落事故などで多くの人命が失われている。これらの例では(少子高齢化の日本で)、若い人が犠牲になっているのが痛ましい。バスのように多くの命を乗せているものもそうだが、タンクローリーのように危険物を積んでいる車両も事故を起こせば大変な被害を招くことがある。
すでに走るコンピュータと化している現代の自動車のデータは、リアルタイムに採取することができる。これらの情報を活用するというアイデアはかなり古くからある。それが十分にできていないのには、いくつかの理由がある。
◆現在情報を収集している企業・団体の反発
例えば整備や車検のおりにはデータを収集していて、安全対策などに活用されている。ただ、これが自動車メーカー以外には(例外はあるが)流通していない。データはメーカーのものだという「囲い込み意識」があるのかもしれない。
◆費用対効果の検証
データを収集・蓄積・分析し流通させるには、いくらICTが安くなったからとはいえ、コストがかかる。そのコストに見合う効果があるかどうか、社会全体として十分に検証できているわけではない。車載設備のコスト負担は一般的にメーカーだろうが、そのコストを誰に補填してもらえるかも不透明だから、メーカーだけにデータがたまるというのもある程度は納得できる。
◆個人情報との線引き
クルマはモノだが、運転しているのはヒトである。ハンドルの操作やアクセルを踏んだ角度、ブレーキをかけた位置などヒトに関わる情報もデータとしてクルマは吐き出してくる。これらのデータのどの部分が、下記の分類に当たるかがわかりにくい。
・個人情報保護法にいう「個人情報」
・個人情報ではないが、もう少し広い概念の「パーソナルデータ」
・純粋に機械が吐き出す「非パーソナルデータ」
http://www.mlit.go.jp/common/001068256.pdf
ここで取り上げられていることは技術的には直ぐにできることばかりであるが、あえて将来ビジョンとした理由は上記の課題を解決するのにはいくらかの時間が必要だと考えたからだろう。
<続く>