Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

南スーダンの自衛隊

 南スーダンにPKO派遣されていた陸上自衛隊の帰国が始まっている。北朝鮮やシリアの騒ぎで報道されることが減っているが、これまで自衛隊員に死傷者が出なかったことは幸いとしたい。

 
 
 この記事では「積極的平和主義」の限界だと述べているが、そもそもこの国の混乱度を考えればPKOそのものの派遣が正しかったのかどうか疑問がある。政府勢力と反政府勢力というが、簡単に言えば民族対立を含む覇権争いをしている複数の勢力があるというだけのことだ。政府勢力だから大義があるとは限らない。

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 そこに日本政府は施設部隊を送った。歩兵でもなく、機甲でもなく、工兵部隊である。施設(工兵)部隊は荒れた道路を整備し、地域の復興に貢献したと言われる。そのこと自体に嘘はない。国会で安部首相が「自衛隊に死傷者が出たら、首相を辞任する」と言った時は信じられなかった。施設部隊と言えど、軍事組織である。 自衛の兵器も持っている。それは危険があるからだ。衝突か戦闘かは別にして、そのような危険があれば銃撃戦等に巻き込まれる可能性はあり死傷者の出る可能性もある。
 
 今世界の主要国で、政府が一番安定しているのは日本である。その日本を混乱させようとすれば、南スーダン自衛隊を襲撃すればいいわけだ。これは民進党の支持率を数%上げるより簡単に思える。これまでのところ、そのようなことを考える組織・国が無かったことは幸いであった。
 
 政局話はさておき、本書は工兵という兵科の誕生から意味までを解説している。18世紀ころに工兵という兵科が萌芽したようだが、日本でも戦国時代城を作ったり、塹壕を掘ったり、攻城兵器を操ったりする工兵部隊は存在した。創業400年あまりの大手建設会社「竹中工務店」は、織田・豊臣系の工兵部隊がルーツだという。
 
 日露戦争で旅順の要塞に痛い目にあった帝国陸軍は、攻防に使える工兵部隊の増強に努めた。さらに第一次世界大戦では、毒ガス・爆薬・戦車などが登場、工兵の役割がどんどん広がった。機甲部隊や機械化歩兵が主力となった第二次世界大戦では、道路の整備や架橋作業なども必要度を増している。核兵器登場後は、放射能対策も任務に加わった。ドイツ軍の「突撃工兵」のように極めて攻撃的な性格の部隊を除けば、破壊することしかないミッションの中で唯一「モノ造り」を体現できる兵科といえるかもしれない。
 
<初出:2017.5>