Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

北の防人

 函館は、ロシアとも関係の深い町だ。定宿「ガーデンハウスCHACHA」の前には、ロシア正教の「聖ハリストス教会」がある。教会に入ると「聖ニコライの碑」があるし、函館山を背景にした尖塔もあり、おごそかな雰囲気を醸し出している。
 
 以前稚内を訪れた時驚いたのが、キリル文字が道路標識などに書かれていたこと。確かにサハリンも望める街だし、ロシア人観光客や船員が定常的に訪れるのだろう。函館はさすがにそこまでのことはないが、ロシアの雑貨店もあり、雪河亭などロシア料理を味わえる店もある。
 
 とはいえ、ここ函館に五稜郭が建てられたのも、もとはといえばロシアの圧力に対抗するためだった。日露戦争のころはもちろん、冷戦時代も含めてロシア(&ソ連)は、日本の「仮想敵国」でもあった。陸上自衛隊の精鋭「第7師団」は北海道にいて、着上陸してくるソ連軍の機甲師団に備えていた。ドイツ南部のフルダ峡谷も、ソ連機甲部隊をNATOが迎え撃つ想定戦場だったが、北海道もその位置づけだった。
 
 "Fulda Gap" (というシミュレーション・ゲームもあった)と違うのは、ここが陸続きではないこと。サハリンを望めるといっても、40kmは離れている。そのため、精強ソ連軍といえど海上移動をする時は無力な状態になる。ソ連軍からみれば、その間をどうやって守るか、航空戦力と海上戦力にかかっているわけだ。まあ、ヒトラーやナポレオンが渡れなかった「ドーバーの白い壁」と同じ。
 
 函館には、小規模ながら海上自衛隊の基地がある。

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 停泊しているのは、艦番号114の「すずなみ」(汎用護衛艦DD たかなみ級)と艦番号680の「ながしま」(掃海艇MSC うわじま級)の2隻。ほかに海上保安庁の船舶も見ることができる。穏やかな街函館の、北の防人としての一面である。
 
<初出:2016.7>