Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

国威高揚の大活劇

 ウー・ジン監督主演の戦争活劇「戦狼Ⅱ」を、今回のフライトで見た。主人公の元中国特殊部隊員レイ(冷)は、アフリカでの紛争に巻き込まれる。冒頭からRPGカラシニコフを持った海賊船2隻と素手で渡り合い、転覆させる活躍を見せる。中国版のアメコミヒーローのようだ。

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 レイは単身紛争地に入り、そこにいる人たちを救出しようとする。戦車を含む巨大な戦力に対し、時には原始的な手作り弓矢で立ち向かう。エボラをモデルにしたような熱病に侵されたり、戦車に包囲されたりと危機の連続だが、戦友とも言うべき人たちに助けられて、レイは反乱軍の中心である白人傭兵隊と戦う。戦車を乗っ取って戦車戦をするところや、中国軍艦の巡航ミサイル発射シーンは興味深い。最後はボスキャラと、お約束のカンフー格闘である。
 
 まあ荒唐無稽な活劇なのだが、いくつか気になるところがある。まず舞台となる国だが、「一帯一路」の終着点アフリカ東海岸のようだ。ここに中国人が病院やプラントを建設運営していて、これは現地政府への協力事業として、中国人とアフリカ人が一緒に働いている。
 
 そこに首相(これもアフリカ人)すら射殺した反政府勢力と白人傭兵部隊が、攻撃をかけてくる。アメリカを含む各国の公館や軍隊が撤収する中、空母を含む中国艦隊が「白馬の騎士」のようにやってくる。ただ艦隊の目的は邦人保護で戦争への介入は禁止されているから、悩んだ艦隊司令はワンマンアーミーであるレイに奥地の邦人救出を依頼する。
 
 反政府勢力に攻撃された病院やプラントからの救出にあたっても、中国人だけとする管理者に対しアフリカ人も仲間だから一緒に脱出しようという軍人もいて、このあたり身勝手な民間と公正な軍人ということを主張したいようだ。
 
 国内に対しては国威高揚、アフリカ等「一帯一路」諸国に対しては「アメリカより中国が信用できますよ」とのメッセージと思った。昔からハリウッドの映画には米国政府がカネを出して世論形成をさせているという噂はある。この映画は中国軍の全面的な協力なしには撮れないでしょうから、もっと露骨ですけどね。
 
<初出:2018.1>