以前「八丁味噌を使った豆腐料理、通称「トフ焼き」のことを紹介した。僕の親父の田舎料理で、親父の大好物である。愛知県の尾張地方、恐らくは北の方の田舎料理だと思う。木曽川沿いの上流に犬山という街がある。ここは尾張藩付け家老（幕府から目付代わりに送られた家老職）成瀬家の城下町で、木造の天守閣が今に残る観光地である。
その狭い繁華街に、豆腐田楽はじめウナギやナマズのかば焼き、ドジョウ料理など昔ながらの料理で一杯やれる店が並んでいた。そんな郷愁があって、東京のある居酒屋で「豆腐田楽」を頼み、期待外れに終わったことは一度書いた。
もうあのころの田楽は食べられないかなとあきらめていたところ、今回連れて行ってもらった和食店のメニューに「豆腐田楽」とあるのを見つけた。外れで元々と思って注文すると、なんとそれらしいものが。
豆腐に打ってある串は僕の記憶より太いものだが、たっぷり盛られた八丁味噌、一つだけだけど乗っかっている山椒の葉･･･おお、これぞ「トフ焼き」である。豆腐の食感としては少し柔らかめ。焼き目も不足だったが誤差の範囲、久し振りの日本酒で美味しく頂いた。
＜初出：2018.6＞
