Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

破産したのに資産超過

 普通債務超過に陥って破産管財人に運営が委ねられた後、債務の履行(借金の完済)は難しい。借金を簡単に返せるなら、正々堂々事業を続ければいいし金融機関からつなぎ融資を受けることもできよう。しかし、破産から3年余経って実は資産超過になっているのだが、債権者に簡単には返済できないという奇々怪々な事態が発生した。

 
 
 簡単に要約すると、2014年に破綻した「Mt.GOX」の事件では、仮想通貨ビットコインが無くなったのはサイバー攻撃ではなくて運営側の詐欺だったのだが、同社はその時点で破綻している。しかし、当時は債務超過だったかもしれないがその後の仮想通貨暴騰によって、資産超過になってしまった。にもかかわらず、債権者の仮想通貨での配当ができないので、仮想通貨を少しづつ売りに出して「現金」を得ようとしている、というもの。

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 債権者は仮想通貨での返済を求めているのだが、現行法では現金で返済しないといけないので、上記のような手続きを取っているわけ。少しづつとは言いながら、結構大量なので売りに出すと仮想通貨相場が下がってしまうというから恐ろしい。
 
 先日のサイバーセキュリティのシンポジウムでは、日銀出身の某教授が、「コインチェック事件の捜査はこれからだし、Mt.GOX事件は今に至るも何が本当に起きたかわからない」と発言していた。恐らく捜査手法も含めた法体系そのものが、完全に時代遅れになっているのかもしれない。
 
 すでに誰にも制御できない規模になってしまった仮想通貨、何か起きれば百億、千億円の単位で被害が出る。日本の法律は明治期にその骨格が固まり、その後は小さな変更をしているだけだ。それではもう、対応できなくなっているのだが「立法府」はご承知のような混乱ぶり。ひょっとすると憲法9条より重要な課題かもしれません。
 
<初出:2018.5>