Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

海の王者を追い落とすもの

 20世紀前半、海の王者と言えば「主力艦」こと、戦艦と巡洋戦艦だった。単なる戦術兵器ではなく戦略的・政治的兵器として君臨し、大国はその国の資金・人材・技術の粋を集めてその開発・運用にあたった。「主力艦」がその地位の絶頂にあったのは、実質的に日露戦争から第一次世界大戦までだった。

 
 戦艦は当時の最新鋭艦といえど最高速力25ノット/時であり、巡洋艦などの他の艦艇との共同行動は難しかった。一方巡洋戦艦の中には30ノット/時を出せるものもありこの点は解消できたが、防御力(特に垂直方向)が不足で、いざという時の耐久性に不安があった。現に第一次世界大戦の(おそらくは空前絶後の)シェットランド沖海戦では、英独の大艦隊が砲戦を交わし沈没したのはすべてこの種の艦だった。
 
 海の王者の座は第二次世界大戦まで引き継がれたものの、すでにもっと安価な新兵器である航空機(&航空母艦)や潜水艦にとって代わられつつあった。しかしその存在感はまだ衰えていなかった。真珠湾攻撃を主張した連合艦隊司令長官山本提督も戦艦について「政治的意味がある」とコメントし、存在を認めている。

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 第二次世界大戦後、海の王者の座は航空母艦と潜水艦に移った。しかし彼らも非常に高価な兵器になり、より安価な兵器に取って代わられる宿命は持っている。その候補は、空母艦隊を一撃で葬り去れる弾道ミサイルや空中/水中ドローンではないかと言われている。
 
 
 この記事は日本(軍)が特に東シナ海防衛のために、水中ドローンとも言うべき兵器を開発することに前向きだとのことである。海の王者のひとり原子力潜水艦(含む弾道ミサイル潜水艦)らを発見・追尾する、無人兵器の研究開発である。人工知能(AI)よって、これまでのドローンより優れた能力を示すと期待されている。
 
 この記事は、例えブラフにしても意味のある事だと思う。ただ一方、日本政府は人工知能の実用化にあたり7つの条件を課すと言っていて、その中に「人工知能の決定に対して企業が説明責任をもつ」ともある。探知したのが敵性国家の潜水艦だと人工知能が断定した理由についても、自衛隊は説明してくれるのでしょうか?
 
<初出:2018.12>