海洋進出を止めない中国海軍は、南シナ海に人工島を建設し大型機を運用できる飛行場まで整備している。この洋上基地を拠点に、「遼寧」などの空母戦闘団を配して南シナ海の領有を確固たるものにしようとしている。覇権国家の中国が、15世紀以来失ってきた技術的優位や経済力を背景に世界制覇に乗り出そうとしているように見える。
米海軍はしばしば「航行の自由作戦」と称して南シナ海に軍艦を派遣、中国の南シナ海支配に待ったをかけようとしている。先ごろは、英国海軍の強襲揚陸艦「アルビオン」がこの海域を押し通った。Brexitなどで影の薄くなった英国だが、地球の裏側でも「ロイヤル・ネイビー」の意気を見せてくれたことは心強い。
潜水艦「くろしお」が8月に呉を出港し、当該海域で極秘任務をしていたのだという。その後、「かが」を中心とした護衛艦隊と合流したとこの記事にある。報じたのがよく「憲法違反」と騒ぐ朝日新聞というのが興味深いが、もちろん誤報ではあるまい。
空母戦闘団は現時点での海の王者であるが、対艦ミサイルの飽和攻撃を喰らえば危機に陥る。その他にも脅威はあって、その大きなものが「静粛性の高い潜水艦」である。原子力潜水艦は、浮上することなく長期間行動できるし、速度も速い。メリットは大きいのだが、構造上静粛性に欠ける課題を持っている。じっと海底に沈座していても、原子炉の音は無くすことができない。
一方ディーゼル潜水艦は静粛性に優れているので、待ち伏せ攻撃をするに最適である。海上自衛隊の潜水艦は世界でも一二を争う静粛性が特徴。これには機械工作精度や、乗員の練度の高さも貢献している。つまり「遼寧」艦隊の天敵ともいえるのが、海上自衛隊のディーゼル潜水艦なのだ。それを誇示するかのような作戦を展開し、かつそれを朝日新聞にリークしたということには意味があると思う。
興味深い話だとは思うのですが、以前紹介したデニス・ブレア元提督(笹川USA)の「模擬攻撃」を実践したりはしていないですよね。それは無謀というものですよ。
<初出:2018.9>