Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

空飛ぶ巨大ウミガメ

 青い日系航空会社が、今年5月からホノルル路線に世界最大の旅客機エアバスA380を就航させる。今月その初号機引き渡しが、フランスのトゥールーズで行われるとの報道があった。

 
 
 「フライング・ホヌ」(ホヌとはウミガメのこと)と名付けられたこの機体、520人もの乗客を一度に運ぶことができる。50年間飛び続けているボーイング747を引退に追い込むとの意図で設計されたというが、747が一部二階建てになっているところこの機体は総二階建てである。特徴的なのは、プレミアムエコノミーが73席もあって、ビジネス(56席)よりも多いこと。日本からの飛行時間が7時間あまりと近いことから、プレミアムエコノミーで十分と感じる顧客が多いからだろう。もちろん、ビジネス客より観光客の方が多いだろうとの計算もあるはずだ。

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 ただ全世界的にみると、A380には逆風が吹いている。このような巨人機でハブ空港間を結びトランジットしてもらおうというより、2発の中型機でピアtoピアで都市間を結ぶほうが主流になってきているからだ。現実にエミレーツ航空は40機近いA380をキャンセル、中型機の発注に替えた。これが引き金になって販売不振だったA380の受注残が事実上なくなり、エアバス社はA380の生産中止に追い込まれた。ルフトハンザなどは保有しているA380を売りに出してすらいる。そんな機材を青い日系航空会社は3機購入・運用することになるのだが大丈夫だろうか?
 
 もともと日本・ハワイ路線は、赤い日系航空会社が長い時間かけて開拓してきたもの。そこに非常に大きなキャパシティをぶつけて市場を奪おうというわけだ。旅行者としては、値崩れとはいかないまでも相応の値下げが起きてくれればありがたい。これは両社(特に青い方)の経営陣から見れば困った話、A380を運用するには大きな固定費がかかる。1席空くごとにダメージを受けることになる。
 
 一見すると青い方の積極経営に見えるのだが、何らかの事情で3機購入せざるを得なくなり、苦肉の策でのホノルル路線投入ではないかと危惧する。経営破綻したスカイマークA380をキャンセルするにあたり、多くの交渉があったようだ。スカイマークは青い日系航空会社の支援で立ち直りかけているが、支援の一環としてエアバス社へのオブリゲーションを負ったのなら困った話。まさか、国交省や政治家がウラで動いていませんよね?
 
<初出:2019.3>