Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

アメリカにとっての「シリア」

 南米の産油国ベネズエラが揺れている。独裁色が強く評判の良くない現職大統領に対し、暫定大統領を名乗る人物も現れた。トランプ政権は暫定大統領を支持し、これにはヨーロッパ諸国も賛同した。一方ロシアは現職を支持、中国もロシアほど積極的ではないにしても、現職支持に回った。

 
 改めてベネズエラの状況を聞くと、経済はほぼ崩壊状態であることがわかる。天文学的なインフレーションで、ほぼ通貨の意味は無くなっている。たぶん闇で流通する米ドルなどが、市民の生活を支えているのだろう。背景を考えれば、米国の「シェール革命」が原油価格を不安定にしたことも経済を弱めた原因だろう。
 
 ただ、現職大統領の政策がうまく行っていたわけではない。腐敗や選挙の不正疑惑もあり、打倒されるべき政権だという欧米諸国の主張には説得力がある。一方兵器をたくさん買ってもらうなど経済的な関係の強いロシアは、「米国はベネズエラ内政に干渉するな」と警告している。
 
 
 この状況は、内戦こそ起きていないがシリアに似ている。それだけでなく、多くの市民が国を離れる現状も、シリアに似ている。ではその難民はどこへ行くのか?パナマ等近隣の国や国境地帯にとどまる人もいれば、もっと北のアメリカを目指す人たちもいるだろう。そう、まだ「壁」の建設ができていない米国・メキシコ国境へ。

        f:id:nicky-akira:20190701000926p:plain

 「壁」の議論の中で、1,000kmを超える距離を歩いてくる難民の話が紹介されていた。どこから来るのかはその時は聞き逃したが、ベネズエラからの難民もいたに違いない。欧州各国はアルジェリア等アフリカ諸国からの難民にも頭を痛めているが、大口はやはりシリアだ。シリア内戦を治めないと、欧州域内の難民問題の収斂は不可能だ。これと同じことが、米国にとってのベネズエラにいえるような気がする。
 
 欧米対中ロという代理戦争になりそうなベネズエラの「二人の大統領抗争」だが、このハンドリングを誤ると膨大な難民ガメキシコ・米国の国境にやってくるだろう。強硬に「壁」を立てれば、メキシコ政府とトランプ先生の関係も悪化する。ちょうどトルコのエルドアン大統領が欧州各国にハラを立てているように。日本/日本人にできることは少ないですが、内戦などにエスカレートしないことを望みます。
 
<初出:2019.2>