Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

OHIO, the Rust Belt

 1960年以来、オハイオ州を落として大統領になった人はいない。選挙人18人を持ち激戦州として知られるオハイオ州には、大統領を決める州というジンクスがある。ラスト(錆びた)ベルトという言葉は、今回の選挙まで知らなかった。オハイオ州がそんなに寂れたところだという印象は、持っていなかったからだ。

 もちろん僕自身は行ったことはない。しかし今年オハイオ州の政府関係者と会う機会があって、いろいろ良い点を吹き込まれていた。いわく、

 ・エリー湖に面していて、クリーブランド始め良港が多い。
 ・全米でも十指に入る人口の多い州。
 ・中でも人口の1/4が未成年で、若い労働力が多い。
 ・大学も多く、教育程度が高い。
 ・航空路線が発達していて、ニューヨーク・ワシントンDC・ボストン・シカゴ等へ

  の移動も便利。
 ・それゆえ、世界的に名の通った企業の本拠地が、州内にある。
  P&G、メイシーズ、ディーボルト、グッドイヤー、アバクロンビー&フィッチ他

 五大湖の水利があるので、シカゴなどと並んで重工業が盛んだったようだ。重い原材料を入れ重い製品を出荷するには陸路より水路の方が有利である。また湖なので外洋のような波浪対策は必要ない。オハイオ州の製造業の総生産額は、全米でベスト3に入るという。その重い工業が徐々にすたれ、人口増加も頭打ちになっているのが現状である。

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 人口の約80%が白人。彼らはこの30年ほど、ほとんど無視されてきた。製造業が日本や中国、さらにASEAN諸国に移ってゆく関係で、米国政権は金融とICTに産業の軸足を移した。また彼らよりさらに厳しい経済状況の人たち(含む移民・難民)には、オバマケアなどで環境を緩和した。それゆえ彼らは「忘れられた市民」になっていたし、自らもそう感じていた。

 忘れられてサビてしまった人たちの怒り、それを代弁したのが(品位に問題はあるが)トランプ候補だったということである。
 
<初出:2016.11>