Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

タスク・フォース

 米国海軍は真珠湾でほとんどの主力艦を行動不能にされ、フィリピンにいた巡洋艦隊も壊滅してしまった。米軍は、西海岸や大西洋から補充した艦艇で、当座をしのぐしかなかった。手もとにあるのは、数隻の空母と巡洋艦だけである。
 
 日本軍は、フィリピン、インドネシア、マレー、シンガポールを占領しニューギニアに進撃してきた。ニューブリテン島のラバウルという港町にも基地を建設、フィジーサモアやオーストラリアに迫ってきた。正規航空母艦サラトガが戦列を離れ、空母は3隻だけ。米国海軍は、1隻の正規空母を中心に3つのタスク・フォースを作った。
 
 これを単独、もしくは複数で、焦点となる戦場へ送ろうというのである。画像は、2つのタスク・フォースを示したものである。2つのグループの距離は実際には十分離れている。主力は正規空母エンタープライズ・ホーネット(対空火力6・防御力4)である。護衛に重巡洋艦(砲撃力6・対空火力2・防御力5)と軽巡洋艦(砲雷撃力2・対空火力6・防御力3)が付いている。

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 この軽巡洋艦アトランタ・ジュノーが、切り札である。この艦は、日本軍の金剛型戦艦の倍の対空火力がある。英国海軍も開発した「防空巡洋艦(CLA)」に類したものだ。英国は旧式軽巡洋艦の主砲や魚雷を降ろし対空砲を積んだが、米国海軍は専用艦を新造したのだ。このクラスは、12.7cm高角砲を16門も積んでいる。
 
 空母そのものの対空火力も、日本軍のそれの倍ある。護衛の防空巡洋艦を合わせた対空火力12というのは、日本の攻撃機にとって脅威になるだろう。一方、1942年の時点では米軍の攻撃機の能力が低く、守りは固いが攻めが心もとない米軍と、攻めには強いが守りはもろい日本軍という奇妙なバランスがとれていた。
 
 米軍の空母1隻単位のタスク・フォースは、英軍の空母1隻づつ艦隊に配備するものとは違う。英軍は主力艦も含む艦隊防空や偵察のために空母を配備した。以前、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスの紹介したが、その時空母インドミダブルが随伴していたら、2隻は助かったかもしれない。
 
 米軍のタスク・フォースは、できれば複数の空母で目標を破壊することを目指したものである。その点、日本軍の空母集中運用と同じなのだが、日本軍はいったん敵に発見されたら全部の空母の位置が分かってしまう。米軍の「分進合撃」方式なら、1つのタスク・フォースの位置が露見しても、他のタスク・フォースは安全なまま敵を狙うことができる。日本軍の指揮官は「もう1隻の空母はどこにいるんだ!」と焦燥をつのらせることになる。
 
1940年代初期の短い期間、航空母艦という新しい兵器の運用について、各国が試行錯誤を重ねたことがあったと歴史は伝えている。
 
<初出:2016.7>