Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

トップヘビーにご用心

 このところ立て続けに新戦力、新技術を発表しているロシア軍、というかプーチン最高司令官。ミサイルディフェンスをすり抜ける高速弾道弾や、超長距離巡航ミサイルなど、本当に出てきたら一気に軍事大国だよねとは思うが、どう考えてもまだサイエンス・フィクション

 
 それでもこの発表だけは本物であろう。新型のステルス・フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」の就役が近いという記事があった。
 
 
◆アドミラル・ゴルシコフ
 排水量: 4,500トン
 最高速力: 34ノット
 航続距離: 4,000マイル
 主兵装: 130mm砲、CIWS、53mm魚雷発射管、対地対空ミサイル等
 
 記事は類似の米国フリゲートより小型だが、重武装であると述べている。小型とはいえ、排水量ロシア海軍になってから就役したどの艦より大きい。これからの海戦を考えれば、事実上の主力艦である。ただ気になるのは技術上の問題点がいろいろ出てきて、進水からすでに10年以上経っていること。
 

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 例えば、速力と航続距離の双方を欲張ったために、2種類のガスタービンを2基づつ積んでいること。この構成で最大の効率をえるための制御が難しいのかもしれない。エンジンの不調に悩まされているという。スペックを見ると、エンジンだけでなく欲張った設計であることがわかる。米国フリゲートが57mm砲搭載なのに、130mmの主砲を持っていることもそのひとつ。数をあまり作れないから、1隻にできるだけ高い能力を求めているわけだ。この思想は、主力艦・補助艦を、米・英の5に対し3に制限された帝国海軍と同じである。
 
 大日本帝国海軍は同じ排水量でもより多くの兵装を積んだため、巡洋艦駆逐艦水雷艇などがトップヘビーとなって航行の安定性を欠くことになった。1934年には水雷艇「友鶴」が転覆、翌1935年には最新鋭特型駆逐艦「初雪」などが艦首切断の憂き目にあった。
 
 艦隊戦力に関しては、ロシアは持たざる国である。そもそも陸棲国家であるロシアが大艦隊を持てないことは、歴史が証明している。持たざる国の無理な設計、帝国海軍の例を他山の石としていただきたいですね。
 
<初出:2018.6>