Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

新鋭戦闘艦は撃たれ弱い

 

 6月に米海軍のイージス艦フィッツジェラルド」がタンカーと日本近海で衝突、7名の犠牲者をだしたばかりというのに、今度はマラッカ海峡イージス艦ジョン・マケイン」(約8,300t)がリベリア船籍のタンカー「アルニックMC」(約30,000t)と衝突、10名が行方不明になった。
 
 
 いずれも、自分に比べて数倍の排水量を持つ民間船と衝突しての被害である。軍艦というのは、基本的に被害を受けることを想定して設計されている。例えば1930年ころの主力艦(戦艦)は、決戦距離で自分と同クラスの主砲を喰らっても主要部分は守られるという防御力(装甲等)を持っていた。
 
 例は全く違うが、路線バスのように十分大きなクルマに、戦車がぶつかってゆくシーンを見たことがある。主砲の先端が触れると、車体はアメのように曲がり熱したナイフがバターを貫くように易々とひねりつぶした。これが戦闘用と民生用のちがいなのだ、と妙に感心してしまった。

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 同じようになるのかと思っていたら、フネの場合はそうはならなかったようだ。これは現在の戦闘艦がほぼすべて「撃たれることを想定した造りになっていない」ことを示している。今やブリキで電子兵装やミサイルを包み込んでいるようなものが、新鋭イージス艦なのである。
 
 ズムウォルトのようにステルス性を持って見つからないようにしたり、敵のレーダーを無効にするような電子戦能力を持ったり、攻撃を受けてもこれを迎撃するシステムを持っていたりして攻撃を受けないようにするのが現在の軍艦の設計思想なのだ。今回の2つの事故民間船には大きな被害もないようで、新鋭艦の撃たれ弱さが露呈した感がある。それにしても立て続けのイージス艦の事故、最高司令官が無茶苦茶な言動をして組織のタガが緩んだ様に見えてしまいます。これで本当に戦えるのでしょうかね?
 
<初出:2017.8>