Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

再び核の冷戦時代へ

 中距離核戦力(INF)廃棄条約が、とうとう「廃棄」された。米ソ冷戦を終わらせるきっかけとなった象徴的な条約で、当時のレーガンゴルバチョフ両首脳が条約にサインした後笑顔で握手するシーンは今も時々ニュース映像に使われている。

 
 ただ当時は画期的であっても、米国とロシアの2国だけで結ばれ第三国は縛れない条約はすでに意味のないものになっていた。中国がこれほど早く大国になるとは思わなかったのだろうが、韓国並みのGDPしかないロシアを縛り世界第二位のGDPをもつ中国が縛れないのでは、意味はほとんどない。
 
 だから、2国間ではなく中国等を含めたマルチ(トランプ先生の嫌いな言葉だが)の条約を目指すことは悪いことではない。いつかはこちらに舵を切るべきで、それが今になっただけのことだ。ただマルチ条約を練り上げるには時間がかかる。本来は2国間条約を多国間に広げるべきなのだが、中国を巻き込む前に「危機」がやってくるとの米国政府の判断なのだろう。

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 いずれはマルチ条約になるとしても、その間に軍拡競争になるのは現状ではやむを得ない。それを象徴するような報道があった。ロシアの新型ミサイルはたった10発で全米国民を殺すことができるという内容だ。
 
 
 これは米国の「軍産複合体」向けの応援メッセージと思えばいいのだが、世界がこういうトレンドにあることは明らかだ。米国にしてみれば、対ロシアの対策(研究・開発・配備等)を行うことで対中国の戦力も整えやすくなるということだろう。
 
 50年前とはちょっと違った「冷戦」がはじまるような気がする。「冷戦」にもいいことはあって、小規模の紛争は減る。半島の付け根の国も、冷戦構造では勝手なことはできないだろう。少数の戦術核を除けば、大量破壊兵器が一旦使われれば世界の破滅につながる公算が高いのだから。
 
<初出:2019.2>