Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

選挙Yearへの脅威

 プーチン大統領自らが関与して大統領選挙中の米国民主党本部へのサイバー攻撃をしたとの疑惑を、米国情報部門が明らかにしている。当初は「でっちあげ」と言っていたトランプ次期大統領も、報告だけは受ける姿勢に転じたらしい。もちろんロシア政府は「魔女狩り」だと非難を続けている。

 
 サイバー攻撃があったから大統領選挙の何が曲げられたのかについては、僕にはわからない。ただ、総得票でヒラリー候補が勝っていたことも事実で、一部報道が言う「米国の分断」は一層深刻になるだろう。もうひとつ不安の声が上がり始めたのが、今年選挙を控えている欧州各国。3月にオランダ総選挙、4~5月にフランス大統領選挙、秋にはドイツの総選挙がやってくる。
 
 ロシアはサイバー攻撃の老舗国である。2007年、IT活用先進国エストニアに対し2週間にわたって攻撃を続けたのが顕著になった最初の例。続く2008年には、グルジア(最近ジョージアというらしい)に大規模な通信障害を起こさせた。これはサイバー攻撃というよりは、一緒に戦車まで入ってきたので立派な軍事行動の一環である。
 
 最近では、一昨年末のウクライナの大規模停電にロシアが関与したのではないかと言われている。グルジアの例を除けばこの手の攻撃で犯人を特定するのは難しいから、100%「お前が犯人だ」と言えないところがもどかしい。それに犯行の証拠を握っていたとしても、検知能力を測られてしまうのでおおっぴらに証拠を出せないケースもある。

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 クリミア問題を巡って、多くの欧州諸国はロシアへの経済制裁に係っている。冷戦時代ほどではないにしても緊張関係にあるわけだ。そこで米国大統領選挙にロシアが介入したとの疑惑が報じられ、トランプ候補勝利の瞬間にロシア人が踊りあがって喜ぶ映像を見せられると、もしやという気にもなる。
 
 ただ明確にサイバー攻撃でなくても、インターネットを使った世論操作が出来ないわけではない。イギリスの分離派はEUへの拠出金の金額を意図的に膨らませ、分離への投票をうながしたではないか。誤情報による世論操作は、SNSを媒介すると威力がケタ違いに強くなる。
 
 日本でもありうるリスクだが、対処法はひとつしかない。有権者情報リテラシーを磨き、インターネット上に溢れてくる情報をみずから見極めることだけだ。決して、インターネットのない「石器時代」に戻ることではない。
 
<初出:2017.1>