Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ロシアの極東戦略

 ワールドカップ大会を無事済ませ、シリアでの存在感を十分示しながら、国内では年金制度改定に対する市民の怒りを買って反対デモに悩まされているプーチン政権。今月は、ロシア版サミットとも言える「東方経済フォーラム」を主宰し、中国や日本の元首を招いた。その席上プーチン大統領が、「思い付きだが、(日本との)平和条約を、前提なしに今年中に締結しよう」と発言したことで、日本国内は結構騒然としている。まあ、その後安倍総理プーチン大統領と2人だけの会合も持ったと言うし、何かが水面下で動いているのかもしれない。

 
 ただこの時期、ロシア軍がソ連時代以来最大規模の軍事演習を極東地域で行ったことを忘れてはいけない。参加兵力約30万人、中国も1万人足らずとはいえ参加して合同演習になっている。ひとつにはまだまだ不安定な北朝鮮情勢があるだろう。金正恩に、「俺たちが付いている」と言うと同時に「アホなことしてこちらの顔を潰すな」と警告したように思う。

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 もうひとつは、60カ国にも及ぶ東方経済フォーラム参加国へのプレゼンテーション。近代的な兵器を間近に見せ、兵器ビジネスの展示見本市にしたということ。その中でも、水陸両用部隊を使った上陸作戦のデモンストレーションは比較的新しいものだ。
 
 国後島択捉島の軍事拠点化は、ロシアが太平洋ににらみを利かすための重要政策。これらの島を含めたクリル諸島は、ロシアの米国に対する最前線である。「 I make Russia great again.」を標榜するプーチン大統領は、極東でもその姿勢を鮮明にしてきたようだ。今のところ冷戦時代に危惧された「ロシア軍の北海道への着上陸」を実現するだけの船舶や航空機はそろっていないだろうが、北の防人である陸上自衛隊の第七師団は南方重視の関係でピーク時の戦力からはダウンしていることもあり、警戒は必要だろう。
 
 ロシアという国の考え方やプーチン大統領の性格からして、平和条約とか北方領土問題解決は正直遠い話だと思う。それよりも北朝鮮騒ぎのどさくさに紛れて、ロシア軍が利尻島礼文島奥尻島などにやってこないか、気を付けていた方がいいでしょうね。
 
<初出:2018.9>