Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

居酒屋チェーンの憂鬱

 首都圏の駅では、どこで降りても駅前のどこかに「呑み屋ビル」ともいうべきものが存在している。かなり前になるが、ある駅前で待ち合わせをしていて雨が降っていたから手近なビルで雨宿りしていた。そのペンシルビルには「xx農場」とか「魚×」とかいう店ばかりが入っていて、客引きが一人立っていた。

 
 「お好みは何ですか。魚ならxx。焼肉ならxx」と勧めてくる。なぜかと聞くと「経営みな同じ」との答え。この言葉どこかで聞いたなと思ったら、香港でのことだった。九竜半島の南端尖沙咀でディナーの店を探していて、ナッツフォードテラスへ迷い込んだ。イタリアンもコリアンも、当然チャイニーズも並んでいる。ここの客引きが「経営みな同じ」と、日本語で言ったのだ。

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 閑話休題。日本の居酒屋チェーンはワタミコロワイド(これらは上場企業)が2強だったが、実は非上場のモンテローザが売り上げ・店舗数とも首位。以下、コロワイドワタミ大庄つぼ八の順位だという。モンテローザは、魚民・笑笑・白木屋千年の宴・山内農場・目利きの銀次・すしざむらいなど30以上のブランドを展開している。これらの店が同じビルに入居して「経営みな同じ」と、来客を迎えているわけだ。
 
 そのモンテローザが、店舗を整理し始めているとの記事があった。
 
 
 理由は「人手不足」というが、この記事はそれに疑問を呈している。そもそも居酒屋チェーンという業態そのものが曲がり角に来ているような気もする。ワタミコロワイドの両者も以前から不採算店舗の整理をしている。若者のアルコール離れや他の外食産業(牛丼チェーンやラーメン店)の参入もあって、業界売り上げは頭打ちである。
 
 僕はもうひとつ「飲み放題」というのが、店を堕落させたのではないかと疑っている。宴会幹事としては支払金額が確定するので便利であるし、大酒のみも下戸もいるので店側としても採算をとることはできる。このようなメリットはあるのだが、どうしてもお酒を大事にしなくなるのは店にとっても客にとってもデメリットだと思う。
 
 理念的な話だが、居酒屋は「お酒」を愛でるべきところ。それが店も客も「お酒」を大事にしなくなれば、いずれは袋小路に入るでしょうね。
 
<初出:2017.6>