Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

民主党政策綱領

 民主党大会は、共和党大会よりはまともな会だったようだ。党の重鎮や大統領経験者(まあ、亭主なんだから当たり前か)もちゃんと出てきて、ヒラリー・クリントン候補の指名受諾演説までの流れを作った。さあ共和党トランプ候補を破って、世界で一番高いところにある「ガラスの天井」を破るぞ、という意気込み。
 
 さて、事実上の公約にあたる「政策綱領」を見てみると、2点特徴的なものが入っていた。公立大学無償化と、最低時給$15である。これらはサンダース上院議員の主張であり、予備選が接戦になったために取り入れざるをえなくなったものだろう。これらが本当に可能か、が今後の論点になる。

 公立大学無償化については、昔は日本がそれに近い状況だった。昭和40年代前半まで日本の国立大学では授業料1,000円/月だった。(僕のころは3,000~6,000円/月) 今のアメリカでは4年制大学を卒業した時点で、$30万以上の借金を背負ってしまうことも多いという。本来ゼロからの社会人生活スタートであるべきなのに、マイナスからのスタートというのは可愛そうだと、誰しも思う。しかし、財源はどうするのだろう?

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 最低時給の話も、難しい。以前から先進国と新興国の「人間の価値の平準化」がおきていると思っていて、新興国の時給を上げないと先進国の時給も下げ止まらないのではないかと考えるからだ。確かに外食チェーン店やコンビニのアルバイトは、インターネットの向こう側にいる新興国の労働者と直接競合するわけではない。しかし経営者の採用基準が時給$15になれば、$15以下の別の労働力を調達しようとする別の動きもあるだろう。例えばロボットである。

 現在ロボットの導入と減価償却・メンテナンス・電力消費などで、時間あたり経費$18と見ている業界があるとする。人間の方が福利厚生など諸費用含めて時間あたり経費が$16なので、人間を雇っている。時給$16と言われると諸費用含めて経費が$20まで膨らむので、ロボット導入に対するインセンティブが働くことになる。
 
 ある経済学者が「最低時給を上げれば、それに見合う付加価値を提供できない人は就業できません。就業を規制するような政策です」と批判していた。今回の「時給$15」も、政策として掲げ徹底させることはできるだろう。それが結果として失業者を増やし、社会の負担を増やすことにならないか、心配である。
 
<初出:2016.8>