Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ダボス会議への挑戦

 今年のダボス会議(政界経済フォーラム)には、中国の習首席が基調講演をした。僕から見ると"Great Fire Wall" の内側にいる総帥が、トランプ政権を意図して反グローバル化保護主義を批判するという興味深い展開になった。一種のネジレ現象に思われる。いつもより1週間早い開催だったが、そうでなければ「春節」行事で習首席はダボスを訪問できなかったのではないかとも言われている。もし日程変更までしたのであれば、世界経済フォーラムの習首席と中国への配慮は並々ならぬものがあったのだろう。

 
 "Brexit" やイタリアの憲法改正否決は、両国の首相を交代させた。韓国の大統領は職務停止中。今年はフランスの大統領交代がすでに決まり、ドイツでもメルケル続投が争点になる。比較的安定しているのは日本だが、米国含めて反グローバルの流れは大きなうねりとなって、世界を揺るがしはじめた。
 
 以前紹介したように、日本で起きていることはデフレではない。グローバル化による世界の労働者の間での「同一労働、同一賃金」に向けた流れだ。発展途上国の労働者と同じ働きしかできなければ、報酬は彼らの水準に引き寄せられるように下がる。一方高い付加価値を提供できる労働者や企業業績を挙げられる経営者の報酬は上がってゆく。そこに格差が生まれているのは、米国が極端な例だろうが先進各国同じ悩みである。
 
 報酬が上がっていく方の代表格である、大手企業(特にグローバル企業)の経営者やエコノミスト等の有識者、政治家などが一同に会するのがダボス会議。ここではグローバル化やイノンベーションによって如何に世界経済を拡大するか、阻害する要因は何か、それを克服する政策等の手段は・・・ということが議論される。

    f:id:nicky-akira:20190509201353p:plain

 これを取り残された人々(例えばラストベルトの労働者)は、苦々しく思うだろう。カネ儲けのことばかり考えやがって、そのためには市民を踏みつけにしてもいいのか、と怒っているかもしれない。昨年から今年の国政に関する投票や選挙を見ていると、その結果こそ彼らがダボス会議へ叩きつけた挑戦状のように見える。
 
 しかしダボス会議は新しく「中国」という巨大なプレーヤーを加え、いままでどおりの道を突き進む姿勢だ。誰かの意思で止められるような話ではなく、ビジネス拡大を躊躇して立ち止まれば必ず誰かが先に行くから、メンバーが変わっても動きは変わらない。一方、市民の怒りの方も収まる気配も可能性もない。トランプ大統領個人というより、その登場の背景の方がずっと危険なのかもしれない。
 
<初出:2017.2>