Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

完全雇用経済(日本編)

 前項で、米国は失業率5%未満でほぼ完全雇用状態にあると書いたが、日本はといえばもっとすごい完全雇用状態(失業率3%)にある。政府はGDP600兆円などとアドバルーンを打ち上げ、新産業振興に力を入れている。当面実現可能性が低くなったTPPは別としても、IR(カジノ)法案審議入りのウワサもあり、ビッグデータ活用法案は衆議院で審議入り即委員会で可決、参議院に送られた。

 他にもGDP増の施策に関する法案があるかもしれないが、与党の積極性を示すものである。悪い話ではないのだが、これらの法案・施策でGDP100兆円積み増しができるほど世間は甘くない。期待がかかるAI・IoT・ビッグデータ産業ではあるが、この活用で新産業が出てきたら、何らかの既存産業が喰われることになる。タクシーが出てきたら、人力車が減るようなものだ。

 

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 その上冒頭に書いたように失業率が最低水準にあるので、就業人口が増えるわけではない。主婦のパート「103万円のカベ」を取り払ったり、高齢者再雇用を促進したり、年金水準下げの可能性を見せたりしても、100兆円分の労働力は出てこない。

 米国では不法移民対策をすることで、労働力不足に直面している業界もあるが、日本だって就学ビザでやってきて飲食店でアルバイトしている外国人は珍しくない。ビザが切れてしまって、不法残留しているケースも多い。この人たちを厳格に取り締まったら、多くの外食チェーンが店舗を閉鎖することになるだろう。中小企業で、技能研修生として受け入れた外国人に帰られたら仕事が廻らないという話はよく聞く。

 人手不足は広範な産業でおきている。10年前と違って第一次産業の担い手不足に留まるものではない。トラックの運転手が足りないので、先頭車両にだけ運転手を乗せ隊列走行(コンボイ)させる話もある。地方自治体に土木技術者がいないところが、目立ち始めた。これでは、自治体に委ねられている道路等のインフラ維持はできるはずもない。

 こういうところにAI・IoT・ビッグデータを活用してできるだけ自動化し、サービスレベルを維持しながら人員削減をするのが本来やるべきこと。もうひとつ、やはり日本も移民政策を本気で考えた方がいいのではなかろうか。

 

<初出:2016.12>