Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

移民の国の移民排斥

 お騒がせトランプ次期大統領の登場で、市場は一喜一憂乱高下している。投票前には恐怖指数が最大に上がり、トランプ候補有利の報が流れるや急激な円高に(当然日経平均は1,000円近く下げ)、しかし当選後最初の演説がまともだったので今度は一転してドル高でニューヨーク株が高騰。しばらくは荒っぽい展開が続くだろう。

 今回は恐らくトランプ次期大統領の最重要政策になるだろう、移民政策(裏返せば雇用政策)を見てみよう。アメリカ始め先進国ではグローバル化が進展して、自国内の雇用の質は低下している。実際は低下したのではなく進化できなかった雇用が多いのだが、この違いは当事者には分かりにくい。

 

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 トランプ政策の第一歩は不法移民(特に犯罪歴のあるもの)の強制送還、続いて各種ビザ等を制限するというもの。外国人が米国内で働くには、いくつか方法があるようで、

・米国内で認められている企業(外資系でも)が正社員として雇用するなら、管理者はL1ビザ、労働者はL2ビザを発行。これには有効期限があり、最大7年らしい。

 

・専門技能を持った人(例:コック)にはH1Bビザを発行。一般の留学生もこの中に入るようだ。
 
・研究者や交換留学生などにはJ1ビザを発行。

 これらを制限する意向らしい。合わせてグリーンカード(永住権)の発効も一時停止、米国内で生まれた子供に自動的に国籍を与える制度も見直すという。日本に比べるとはるかに寛容なこれらの制度(ウワサの二重国籍ももちろんOK)が、米国国民の雇用を奪っているとの考えだろう。うなづけなくもないし、そういうことに直面していない日本人にとやかく言う資格はないかもしれない。
 
 ただ建国以来移民で成り立ってきたのが米国であることも、また事実である。現に多くの先進国が少子化・人口減少に悩んでいるのに、唯一人口増加でそのボーナスを受け取っているのが米国経済である。移民の国が移民を排斥するようになっては、いろいろなところにひずみが出てくるのではないだろうか。
 
<初出:2016.11>