Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

賃上げの光と影

 新年になって次期経団連会長も内定し、政府と財界の関係がより緊密になると兜町ではダウ3万円の超えも掛かる景気のよさである。なんでも株高の材料にしたがる人たちではある。これを背景に総裁続投に意欲を見せる安倍総理だが、年頭産業界に対して3%ほどの賃上げを要求したようだ。春闘というのは労働者が団結して勝ち取るものだと社会人になったころ教えられたが、昨今は労働者の意思を「忖度」した政治家が後押しどころか前ふりしてくれる。

https://www.asahi.com/articles/ASL155CVML15UTFK00Q.html

 とはいえ、これは諸刃の剣だということを労働者は理解しておかなければいけない。実はアメリカの景気も絶好調、トランプ減税のせいもあって企業が減税分を内部留保に廻さず従業員に還元する行動にでているせいもある。上場企業は必要以上の内部留保を溜め込むと、株式買占めによる乗っ取りのリスクが大きくなるからだ。

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 かつては地域の商店街を破壊的な価格で崩壊させ、自社の従業員の給与も抑えて自社の安価な商品しか買えないようにするモデルでのし上がってきたウオールマートにしてからが、今回は賃上げに転じるという。ただこれにはウラがあって、同時に合理化を進めて雇用を減らすことがセットになっている。賃上げと同日、傘下の会員制量販店「サムズクラブ」の店舗閉鎖も発表している。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-12/P2F6EM6K50Y701

 
 このほかにも自動化レジの導入など機械化/IT化によってマシン系の雇用は増えるものの、労働系の雇用は大きく削減できるわけだ。これは以前紹介した「人間のコストが上昇すると、経営の機械化意欲が高まる」という法則によるものである。

 労働者は、常に自らの付加価値を考えなくてはいけない。賃上げは嬉しいことだが、自分の付加価値に見合ったところまでしか上がらないと考えたほうがいいだろう。賃上げには光の部分と陰の部分があること、今回の報道は特徴的な話でした。
 
<初出:2018.1>