Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

BATJ vs GAFA

 BATJという言葉を最近耳にするようになってきた。GAFAとは、米国発のインターネット企業であるGoogle, Amazon, Face-book, Appleのことだが、これに対抗する立場の中国系企業群のことである。カッコ内は時価総額

 
 B : 百度 (642億ドル)
 A : 阿里巴巴 (3,352億ドル)
 T : 謄訊 (3,362億ドル)
 J : 京東 (595億ドル)
 
 これらの企業は中国国内という巨大市場に支えられているだけではなく、インターネットに国境を建てるという中国政府の政策にも助けられて、急速な成長を遂げている。日本を始め世界中の利用者からのデータは、中国に入ってゆく。一方、サイバーセキュリティ法などを盾に、中国からのデータは国外に出てこない。これはある種の「不公正貿易」である。

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 見え隠れするのは、中国企業とその背後にいる中国政府の「世界を覆うデータ覇権」である。これに対抗するものとしては、米国系のGAFA等があり、日本にだって目立たないところで世界中からデータを集めている企業はある。
 
 ただあまりにも中国系企業の成長が早いのと、そもそも民主的な風土はなく覇権主義の国である中国の政治体質が世界を不安に陥れている。僕は「中国がデータ出さないなら、こっちもデータ鎖国だ」などとする感情論には否定的だが、なんらかの措置は要ると思っている。それには「法の支配、民主主義、人権」などで協調できる日米欧の結束が不可欠なのだが、現時点では欧州のGDPRGAFA嫌い、日本でも「GAFAに負けるな」論が出てくるように、結束には程遠い。
 
 しかしデジタル業界の外でも、「米中冷戦」の時代が来たとの見方もある。トランプ政権の「貿易戦争」は無茶な話だが、いずれ来るべき米中対立を早めただけだと後世の歴史家は言うかもしれない。
 
 
 本当の戦争は困るのだが、僕の業界では「BATJ対GAFA」の戦争の方が当面気になる。GAFAそのものにも問題はあるのだが、デジタルエコノミーに興味が薄く孤立主義のトランプ政権というのはいかがなものかと思ってしまう。日本のデジタル業界の悩みは尽きません。
 
<初出:2018.7>