Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

英国のデジタル課税案

 欧州各国が、いわゆるGAFAGoogleAppleFacebookAmazon)に怒っていて、あら捜しをしたりあらたな規制を持ち出そうとしている話は以前にも紹介した。急成長した彼らだが、故意か失策かは別にして税金の払い方などで現地政府ともめるネタを提供していることも確かだ。特にFacebookは個人情報の流出や乱用で苦境に立たされている。

 
 欧州政府としては、市民は悪徳業者であるGAFAらに搾取されている、これを懲らしめて追い出すか、少なくとも何らかのものを取り返すのは「白馬の騎士」に与えられたミッションだと意気込んでいるのだろう。そこで、今度は「デジタル課税」ときた。

https://www.asahi.com/articles/ASLBZ22FNLBZUHBI009.html 

 税金というのは、国家が市民や企業を守るために使う費用を賄うためのもの。関税のような国際間のものを除けば、かつては国内に閉じたものだった。政府が国民の承認を得れば課税できるので、国によって制度は違うのが当たり前である。むしろ国毎に決めることができることそのものが主権であるという人もいる。
 
 しかしデジタル&グローバル時代に困ったのは、当該国に拠点を持たずサービスだけインターネットを通じて送ってくるビジネスモデル。必ずしも欧州各国が米国に搾取されているというわけではなく、(奸知に長けた?)GAFAアイルランドルクセンブルグのような小さな税制の有利な国に拠点を置き、欧州域内にサービスを展開している。

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 これまでのルールだと、当該事業の売り上げ/利益に対する税金はこの小国に納められて、人口の多いフランスやドイツは不利になるわけだ。この記事が言うようなデジタル課税の議論は昔からあるのだが、もし上記のように修正すればいままで潤っていた小国は税収を取り上げられることになる。当然反対に周り、加盟国全部一致しないと改訂できないルールである欧州は身動きできない。

 Brexitでキレそうになっている英国が最初に口火を切った形だが、フランスもドイツも本音ではそうしたい。小さな話かもしれないが、こういうところから連合が崩れることもありそうな話。「デジタルのアリの一穴」となりますかどうですか?
 
<初出:2018.11>