Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

監視社会、中国

 昔から「ビッグブラザー」の脅威については、多くの人が懸念を持っていた。今でいう「マイナンバー」の導入が遅れたのも、個人情報保護法が保護一辺倒で個人データの社会的な活用に消極的だったのも、その懸念が根底にある。10年以上前電子行政の調査で欧州数カ国を回った時、最後のウィーンで「個人番号はあるけれど外部からは見えない番号で、それを使った公務員の行動は正規目的だったかどうか常に監理されている」と言われた。

 
 これはオーストリアがかつて「ナチスドイツ」の一部だったことから、個人番号と電算処理によって「xx以上の資産を持つユダヤ人」というのが瞬時に検索出来てしまうとの懸念を多くの国民が持っていたからである。ちなみにナチスは電算機がない時代だったにもかかわらず、データカードで国民を管理していたとも言う。
 
 ナチス同様の強権的国家でそこそこの予算が振り向けられるなら、現代のデジタルテクノロジーは当時とは比較にならないほど「速く・深く・幅広く」市民統制ができるはず。そしてそれは、隣の大国で現実に行われているようなのだ。
 
 
 100近い民族がいて13億人を束ねていかないといけないとすれば、これはある程度必要悪なのかもしれない。新疆ウィグル自治区では地元の人たちをQRコード(!)で管理するシステムが導入されているとも言う。さらに、以下の記事で紹介したように、中国のデータ産業BATJらに対する政府の関与が強まっているようだ。

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 そうなれば、習政権はもっと多くの個人情報を集め・組み合わせ・監視できることになる。地方での反政府の動きも掴めるだろうし、政敵の弱点を見出すこともできる。まさに「情報を制する者、世界を制す」である。とても巨大になったけれど、全く異質の国である中国。「Great Fire Wall」の向こうだけのことなら、ある程度仕方がない面はあるのだが、それが「Great Fire Wall」を越えて出てくるようでは、僕らは困る。僕らの情報もかの国に握られれば新疆ウィグル自治区のように属国化しかねないし、最初の危険地域は沖縄あたりだろうか。
 
 例えばアリペイのサービスを使ったり、アリババのクラウドを使ったりすると、そのまま習政権にデータが吸い込まれる危険性がある。民間企業としてのアリババには敬意を払いますが、「国家的企業」になってしまったら使うわけにはいかないかもしれませんね。
 
<初出:2018.12>