Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

角を矯めて牛を殺す、か?

 台頭する中国のインターネット関連企業BATJ、その筆頭格で時価総額3,300億ドルを超える大企業「アリババ」のジャック・マー会長が突如引退を発表して、さまざまな憶測を呼んでいる。ずっと規制や旧体制と戦ってきた反骨の士だが、今後は慈善事業や教育の普及に尽力するという。

 
 個人資産も400億ドル近くあるそうだから、もう十分稼いだとして引退も不思議はないのかもしれない。しかし業界関係者は、それを鵜呑みにはしないだろう。イーロン・マスクのように「今度は宇宙だ!」というならともかく、慈善事業では大人しすぎる。何かが彼に事業を捨てさせたと見るのが正しいだろう。これに関して、Newsweekに面白い記事が載った。
 
 
 曰く、中国政府が大きくなりすぎたインターネット関連産業に対して他の基幹産業(医療、金融、通信等)のように関与を強め、ゆくゆくは政府企業で独占する流れをマー会長が認識して「潮時とみて引退」したのだとのこと。地方政府や下級官僚たちとは(何度か収監されたとも聞くが)闘争を続けてきたマー会長も、習大人(いや皇帝か?)がでてきては仕方なしと身を引いたのだろうか。孫子に曰く「全く相手にならなければ、隠れる」というわけ。

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 よくも悪くもインターネット経済の基盤は「自由」、行き過ぎてFacebookのデータが選挙に流用されたなどの問題も起きているが、こういうことが表に出るのはまだマシな方だ。中国政府当局がBATJらを事実上国有化したら、中国国民だけでなく「アリペイ」などを使う日本人すら知らないうちに中国当局の監視下に置かれかねない。
 
 沖縄でBATJのサービスが普及、目標を絞った偽ニュース頒布、選挙に介入して琉球独立、やがて中国の属国化して新疆ウィグル自治区でしているように住民をQRコードで監理・・・などという悪夢も見えてくる。一方中国も2025年をピークに労働人口減に直面する。その対策の一環が「中國製造2025」で、この中にはインターネット経済の要素が深く入り込んでいる。中国当局からすれば「成長基盤としてのある程度の自由は認めながら、インターネット産業を最大限使いたい」という思いなのだろう。しかし一歩間違えれば「角を矯めて牛を殺す」という格言になってしまうこともあろう。(これ中国の故事?)
 
 GAFAと違いBATJの人たちと意見交換をしたことは少ないですし、そういう場(日米中の産業界の会話)があるとも聞いていません。しかしネット産業と政府の戦いというのは洋の東西を問わないということは理解できました。