Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ダボスのトランプ

 米国トランプ大統領ダボス会議に出席すると聞いて、正直驚いた。一昨年の大統領選挙の戦い方は「反知性主義」と言われ、一部の知識を独占した特権階級が富を独占することへのアンチテーゼだった。ラストベルトの労働者たちはこの特権階級に搾取されていると感じて、トランプ候補に票を投じた。

 
 ダボス会議は、僕に言わせれば上記特権階級の総本山である。そんなところに米国大統領としてクリントン以来行くという考えはどうして起きたのだろうか?ブッシュ大統領オバマ大統領も行っていないのだ。「反知性主義」を掲げたトランプ大統領がその総本山に乗り込もうというのだから、普通ならどういう闘いをするのかと思いきや、特段大騒ぎにはならなかったようだ。
 
 昨年は、中国の習近平主席がダボス会議に出席した。昨年の会議日程がいつもより1週間早かったのは、春節行事を避けたためらしい。ダボス会議もこのような配慮をするのだから、トランプ大統領にも何か「お土産」でもブラ下げたのかとも邪推したが、そうでもないようだ。それどころか、彼は自発的にTPPに復帰する可能性まで示した。
 
 

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 彼は「二国間交渉がより好きだ」とはしながらも、多国間交渉も排除しないと言った。以前はTPPを「アメリカにとっての災厄」とまでコキ下ろしていたのに、である。推測するに、この方は周りの雰囲気に影響されやすいのではないか。「エルサレムイスラエルの首都と認める」発言にしても、米国福音派の意向を汲んだと言われるが本人は福音派の教えなどなにも知らなかったという。ダボスの雰囲気が、彼を改造してしまったのかもしれない。
 
 日本にもかつて周囲の雰囲気に流されやすく、「最後の訪問者の意見」が全てのような首相がいた。彼は「普天間代替えは最低でも県外」といった後、「海兵隊が抑止力とは知らなかった」として辞任した。日本よりずっと国際影響力の強い国のリーダーが、そんな風になって欲しくはありませんね。
 
<初出:2018.1>