Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ICOはネズミ講か?

 半島危機など政情不安定なので、円高に振れたり「金」が値上がりしたりしているが、仮想通貨BitCoinの値段も上がっているらしい。機関投資家などがポートフォリオの分散を進めているわけだが、仮想通貨もポートフォリオの一翼を堂々と担うようになったのかとある意味感動した。ところが、この傾向に待ったを掛ける事態が起きた。例によって、デジタルエコノミーの敵役中国政府である。

http://jp.techcrunch.com/2017/09/05/20170904chinas-central-bank-has-banned-icos/

 禁止されたのはBitCoinのような通貨そのものではなく、ICOInitial Coin Offering)という仮想通貨を発行する胴元のような組織や機能。もともと近代の通貨というのはその金属や紙片に価値があるわけではなく、誰かが「価値がある」と保証してくれるから価値を持っているわけだ。かつては「金」に換えることが出来る「兌換紙幣」が流通していた。1円札を持っていけば日本政府/日銀が保証して銀行等で「金」に換えてもらえる。それで流通/利用がすすんだわけだ。

 

    f:id:nicky-akira:20190504095101p:plain

 
 日本が不換紙幣に移っても、しばらくは米国政府はドルを「金」に換える保証をしていた。それが、1971年当時のニクソン大統領が米国ドルの「金」への交換を一時停止すると発表、世界に金融混乱が起こった。いわゆる「ドル・ショック」である。それ以降、世界から兌換銀行券は消えている。それでも日本の1万円札は日銀が1万円の価値があると認めてくれているので、1万円として流通している。

 仮想通貨はというと、政府保証はついていない。胴元の発行事業者も無限責任を負うわけでもなく、その保証機能は限定的もしくは存在しない。あるコミュニティの中で、「NINJAさんは1億円もっていますよね」「そうですよね」「そうですよね」と皆が認めるから、僕が1億円を使えるわけだ。実際に1億円の札束・有価証券等がなくても、仮想通貨のクラウド上の帳簿に載っていればそれでいいのである。

 これまでにない枠組みなので、続々登場するICOは「玉石混交」、いかがわしいものも混じっているだろう。すでに米国証券取引委員会(SEC)もICOには注意するよう投資家に懸念を伝えている。ただ自由の国アメリカではとりえなかった全面禁止措置を打ち出すところが、中国ならでは。中国政府としては、通貨発行の権利は中央政府のみのものであり、それ以外の連中が通貨を発行するなどニセ札作りだし、その仕組みで資金集めをするなどは「ネズミ講」だというわけ。

 デジタル経済はあらゆるものの代替品を提供し、従来のものを破壊してきた。それはいよいよ通貨にまで及んできたわけで、それにドン=キホーテよろしく中国政府が立ち向かうという構図でしょうか?
 
<初出:2017.9>