Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

Their Finest Hour

 英ポンドの下げが止まらない。1年前仕事でロンドンを訪れた時は1£=180
円くらいだったのに、今や130円である。1年で30%近く下がったわけで、見方によっては英国の資産の30%が吹き飛んだといえるかもしれない。英国といえば、かつて7つの海を制覇し陽の沈まぬ国だった。第一次大戦前後から国力が衰え、第二次大戦で深刻な被害を受けたものの、その情報力で堂々と国際社会の一角を占めている。
 
 英国の危機といえば、1982年のフォークランド紛争を思い出す。今でも英国が領有している南大西洋の島々に、近接しているアルゼンチンが侵攻した事件である。当時の「鉄の女」サッチャー首相は海軍の派遣を即断、両国海・空軍が激突した。
 
 アルゼンチン海軍の巡洋艦ヘネラル・ベルグラノや、英国海軍の駆逐艦シェフィールドが沈んだ。旧式巡洋艦はともかく、新鋭のシェフィールドを仕留めたシュペール・エタンダール攻撃機エグゾセ・ミサイルの組み合わせは、武器マーケットで価格が高騰したらしい。結果は「ハリアー英国を救う」と称されたように、空軍力で英国に凱歌が上がった。 

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 それ以前の英国の危機は、何といっても1940年だろう。同盟国フランスがヒトラーに屈し、イタリアまで参戦して欧州でひとりぼっちになった時だ。「ドーバーの白い壁」を越えてドイツ軍が上陸してくることが現実味を帯びていたし、連日ドイツ空軍が空襲をかけてきていた。
 
 この時チャーチル首相は、後年人はこの時代を "Their Finest Hour" と呼ぶだろうと言った。英国人一流の強がりとも意地とも解釈できる。一番苦しい日々が後に一番輝いていた日々に見えるというのは、なかなか言えない言葉だと思う。
 
 この時も数百名の戦闘機パイロットと、スピットファイア(&ハリケーン)が英国を救った。広大な太平洋での作戦を想定した日本海軍と違い、軍用機の航続距離を重視していなかったドイツ空軍は、英国上空で十分な活動ができなかった。
 
 時代を経て、これらとは異なる危機を英国は迎えている。元はといえば「自分できめたこと」なのに、EU離脱との投票結果に自ら驚いているようでは困る。この事態を後年の人たちは "Finest Hour" と呼ぶことはできないと思いますよ。