Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

雇用とAI・ロボット

 AI・IoT・ロボット等々、技術革新の話は相変わらず紙面をにぎわせている。メディアは「今変革が起きるから、取り残されないように勉強しよう」とはやし立てる。ひどいのになると「取り残されたら悲惨だぞ」と脅迫してくる。書店に行けばその手の書籍は一杯あるし、セミナーのたぐいもいくらでもある。コンサルタントというヤカラも跳梁跋扈する。

 
 しかし現実には、急な変化は起きない。これらの言葉が知られるようになる前に、ある分野ではそのようなことが進んでいる。これらの言葉のブームが去っても、導入されない業種や業務はたくさん残る。自らのビジネスに照らして、どういう変化があるかを冷静に判断する時間は十分あるのが普通だ。
 
 このたび、ほぼ同時期に雇用とAI/ロボットに関して2つの異なった趣旨の記事を見つけた。ひとつは「ロボットに奪われる雇用は、日本21%米国38%」というPwCの調査結果。
 
 
 米国や英国(30%)は、金融などサービス業の比率が高く、影響を受けやすいのだという。製造業の強いドイツ(35%)の比率が高いのはこれでは説明できないが、日本に比べてマニュアル化された製造業が多いからだとすればそうかもしれない。
 
 もうひとつの記事は「AIが雇用の脅威になるのは、50~100年先」という米国財務長官の発言。
 
 
 オバマ政権は2016年12月、10年後か20年後には9%から47%の雇用がAIによって脅かされると予測する調査報告書を公開しているが、ムニューチン財務長官はこれを真っ向から否定した形である。例えば自動走行はと問われて「あれはAIではなく、ただのコンピュータ・既存技術だ」とAIという言葉の定義の問題だと述べた。R2-D2が人間の雇用を奪うような事態は、50年後になるという意味らしい。
 

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 言うまでも無く「雇用」は、トランプ政権の最重要課題である。前政権の主張をひっくり返し、雇用は大丈夫だと胸を張りたい気持ちはわからなくはない。しかしAIではないとされた自動走行でも、全米5,000万人の運転手の雇用には十分な影響があると思うのだが。ちなみに画像はシンガポールで見かけた飲食店のウェイトレスロボット、ちゃんと働いています。
 
<初出:2017.3>