Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

核兵器の一撃を受けたなら

 北朝鮮の「火星12号」が北海道上空を通過、約2,700km飛んで太平洋に落ちた。Jアラートがウルサイと怒った人や、防災行政無線が稼動しなかった町、「青森には地下なんかないぞ」とのツイートなど、それなりに騒動を巻き起こした。ミサイルに耐える頑丈な建物はどれだ、という質問もあったやに聞く。

 
 皮肉ではなく、今回の騒動はそれなりに良かったと僕は思う。危機管理というのは計画を立て、設備や手段を用意し、要員を配置しただけでは終わらない。少なくとも何度かの訓練が必要であり、今回はその第一歩と位置づけられるからだ。これを契機に、本当にミサイルが落ちてきた場合のことを考えてみたい。
 
 まずミサイルの最初の攻撃を直撃を受けずに生き残れば、チャンスは十分あるということは認識すべきだ。今回はその一撃が核弾頭を伴った最悪のケースを想定してみた。かの国の弾頭の規模は定かでない。だが冷戦時代ソ連の核弾頭が落ちてきた場合の対処マニュアルというのは、日本にもどこかにあるはずだ。それが想定する以上の破壊力のことは、当面考えなくてもよかろう。しかしもちろん、日本の霞ヶ関等に所蔵されているこれらの文書を、簡単には見せてくれないだろう。そこで、それに替わるものとして米国政府の危機管理マニュアルに着目した。

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 10年以上前、事業継続(Business Continuity Management)の研究をしていて、米国政府の各機関がおおむね同じ表現をしている部分に気づいた。それは、
 
 ・危機が予想されたらあらかじめ決められた要員は自宅に戻り、一定期間別サイトで
  仕事が出来る準備をしてバックアップサイトに集まる。
 
 ・50マイル以上離れたところにあるバックアップサイトには、必要最小限の業務を
  30日間維持できる設備等が用意されている。
 
 というもの。これは地震のような突然来るリスクではなく、ハリケーンのようなある程度予測できる危機に対応したものと思われる。それにしても50マイルってどういう意味だろうかとずっと悩んでいた。その謎が解けたのが東日本大震災の時、福島第一原発での事故が分かった後米国大使館は在日の米国人に対して「フクシマ1号から50マイル離れろ」とメール等で指示した。原子力過敏症のドイツ人などは、本社を東京から大阪に移したところもあったようだが、米国は半径50マイルというのを危険ゾーンとして認識していたのだ。
 
 つまり米国政府機関の考えていたリスクというのは、冷戦時代の核戦争だったということ。これから想定して、風向きなどの誤差はあるものの着弾地点から80kmというのがひとつの目安になると僕は思っています。ただ核ではなく生物兵器だったり、化学兵器だった場合はこの限りではありませんから、あくまでご参考までに。
 
<初出:2017.9>