Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

中国・ロシアの航空母艦

 泥沼化しているシリア紛争であるが、反政府勢力最大の拠点アレッポが陥落したことによって局面は一段落した。簡単に言うと、ロシアに支援されたアサド政権側が事実上の勝利をおさめ、アメリカ他の国の支援は徒労に終わったということだ。こうなるのであれば、反政府勢力への支援などせずアサド政権が自国民を虐殺していたとしても干渉しないでおいた方が、シリアからの難民は少なかったかもしれないと言い出す人も出てくる。

 
 皮肉な見方だが、英独仏は反政府勢力に肩入れしたばかりに紛争を拡大し、いたずらにISを台頭させたり難民を増やしたりしたことになる。少なくとも各国の野党勢力は、そういって政権を揺さぶるだろう。保有している唯一の空母「アドミラル・クズネツオフ」まで投入した、ロシアの本気度がアサド政権を勝利に導いたし、アメリカはじめ各国はそこまで本気にならなかったということでもある。
 
 ロシアはクリミア併合で黒海の軍港を確保し、今回もシリアにある地中海唯一の港を守ることができた。そして、作戦を終了した空母「アドミラル・クズネツオフ」(正式には重航空巡洋艦)は、帰港の途につくことになった。まともな対空兵器を持たない反政府軍相手なので、戦闘での損耗はなかったものの着艦に失敗して2機を喪失したらしい。本格的な空母の運用には、長い時間と実戦経験・犠牲が必要である。

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◆アドミラル・クズネツオフ
 就役 1990年
 基準排水量 53,000トン
 機関 蒸気タービン4基、20万馬力
 最大速力 29ノット/時
 乗員 約2,600人
 艦載機 約50機
 
 一方西太平洋では、昨年末中国唯一の空母「遼寧」が現れ公海上で演習を行い、その模様が公開されている。実はこの2隻、姉妹艦であってほぼ仕様は同じだ。中国がアドミラル・クズネツオフ型の空母をウクライナから買い取って艤装を施し、2012年に就役させたものである。
 
 起工や進水はクズネツオフと同時期だから、就役まで24年間造船施設に浮かんでいたことになる。それがようやく作戦行動の入り口に立ったわけだが、これから本格的に作戦可能となるまでの歳月は相当長いものになるだろう。
 
 24年先に就役したクズネツオフだってまだ学ぶことが多いのだから、その期間が数年で済むとは思えない。仮にこれから24年間訓練を積んだとしても、そのころには空母などというものが時代遅れになっているのではないだろうか。かつての戦艦のように。
 
 「遼寧」の今回の作戦行動について中国が本格的に海洋進出と書くメディアもあるが、僕は単なる政治ショーだと思う。
 
<初出:2017.1>