Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

Credit in Internet Economy(3/終)

 信用を中央銀行なり国なりが付けていない「通貨」というのが、これら仮想通貨の最大の特徴である。過去に流通したどのような通貨もなんらかの公的機関(たとえ亡命政府だとしても)が信用を付けていた。まあ、信用するかどうかは市場次第であるが。政府そのものが信用を無くした時は、第一次大戦後のドイツマルク・エリツィン時代のロシアルーブル・20世紀終わりのアジア等の通貨危機のような事態を招くことになる。

 しかしIT屋の目から見ると、アーキテクチャとしての脱中央管理(Decentralized)はかなり以前から成立していた。メインフレーム・コンピュータが中央にどかりと座り、インテリジェンスの低い端末機(Dum端末という)をつないでやって、教えてやるというのが初期の"Centralized System" である。演算能力のハードウェアが高価で貴重だったので、端末機とそれにぶら下がっている人間は、メインフレームにかしづいているような状況だった。
 

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 その後演算機などがどんどん安くなってくると、"Decentralized Computing/System" というのが出来るようになってきた。人間とそれが所持/利用しているPC(Clientともいう)が主役になり、ネットワークでつながった高速演算機や大容量記憶装置は"Server" としてClientにかしづくようになった。いわゆる"Client Server System" である。主役・脇役の交代が、起こったのだ。

 全てを中央の装置が仕切るのではなく、一定のルールの下でClientが皆なでシステムを利用するという形態が完成した。今やServerは極めて大きくなり、Cloudとして一般利用者からは見えなくなってしまった。これを社会システムに置き換えると、中央銀行が見えなくなっても、利用者皆なが分かっていれば問題ない・・・と言えなくもない。

 仮想通貨の利点のひとつは、ポータビリティだろう。巨額(そんなにあれば嬉しいが)の通貨を、出先で使うことができる。貨幣はかさばるし、クレジット・カードには上限もある。スマホなき時代には、電子マネーをICカードで持ち歩くことを目指した人もいた。仮想通貨は、しかるべき認証パスを通れば、スマホでもPCでも支払いができる。

 通貨としての価値や流通性、利用者の認証など信頼できるシステムに育てられるか、まだ予断を許さないところはあるが、可能性として夢をいだかせるものである。
 
<初出:2016.9>