Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

「IS」がアジアに

  隆盛を誇ったIS(イスラム国)も、イラク第二の都市モスールでは封じ込められ、シリアの最大拠点で首都とも位置づけるラッカの陥落も近いと報じられている。中東における攻勢はしばらくありえないだろう、という観測は正しい。しかしエリアを失おうともその思想を根絶するのは無理な相談で、また違うところで頭をもたげつつある。

 ひとつには、アフガニスタンアレクサンダー大王東征以来、紛争の絶えない地域である。かつての大英帝国も、ソ連もかの地で手痛い敗北を喫して国力を弱めた。このところ旧アルカイダ勢が息を吹き返してきて、紛争が激しくなっている。ドイツは難民のうちで、母国が安全になった場合には送り返す(強制送還!)ようにし始めたが、アフガニスタンへの送還は一次停止している、


 もうひとつはフィリピン。ドゥテルテ大統領の地元ミンダナオ島は、昔から扮装地域である。比較的キリスト教徒が多く、少数派のイスラム教徒はしいたげられてきた過去がある。ミンダナオ島を独立させようという武装勢力もいて、これが資金源として麻薬などに手を出した関係でダバオ市長だったドゥテルテ氏が鎮圧にあたったわけである。

 隠れるところの少ない中東の砂漠と違い、ミンダナオ島はジャングルが深い。ゲリラが活動するには適当な地勢環境である。ISの残党と思しきヤカラが入ってきて、元からいる武装勢力と一緒になってテロを始めたのが数カ月前。しばらく前に、ドゥテルテ大統領は島内に戒厳令を布いた。事実上の内戦状態である。


 先日の政治討論番組で、識者が「インドネシアもマレーシアもバングラデッシュも、イスラム国家である。潜在的なISの入る余地はあるが、いじめられているイスラム教徒ということでは、フィリピンとミャンマーがISの目標だろう」と言っていた。それなりの権利が認められていれば、イスラム教徒はむしろ穏健な宗教だと彼らは言う。追い詰められると、本来の教義を外れたIS思想にかぶれ易いということだ。

 

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 僕自身過去6~7年ミャンマーへ何度も足を運び、現地のICT教育に協力してきた。日本に来るミャンマーの人たちともよく会っている。しかし、ロヒンギャの話は報道されるまで聞いたことがない。正直一般のミャンマー人の意識にはないようだ。

 
 スー・チー政権もロヒンギャの扱いには困っているようで、扱いを間違えると政権は揺るぎかねない。外国の支援が無ければ政権はもたないし、人権問題を解決できなければ支援は細ってゆく。さらに本来は大人しいロヒンギャの人たちがISに感化されて武装蜂起でもすれば、再び軍事政権が息を吹き返す。

 中東でISを叩いても、それはヨーロッパのテロやアジアの紛争につながるだけ、という厳しい見方もできるだろう。ミャンマーも有望なフロンティアだと思って日本企業も支援をしてきたが、その努力が無にならないように祈っています。
 
<初出:2017.7>