Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

オバマケアをめぐる攻防(後編)

 2008年の大統領選挙では、オバマ候補が後年「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度改革を公約にして当選した。ただ野党共和党はこの改革には大反対、文字通りあらゆる手段を使って成立阻止を図った。2010年この法律が成立してからも、半数の州政府が連邦政府を訴え、フロリダ州では違憲判決すら出てしまった。

 
 米国連邦政府の債務上限は法律で定められていて、債務が増えるに従って議会が法改正をしていたのだが、2013年には共和党が債務上限引き上げの法改正を人質にとってデフォルト寸前まで政府を追い詰める異常事態になった。これもオバマケアをあきらめろとの共和党のなりふり構わぬ戦術である。
 

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 しかしオバマ政権はこれらの妨害を振り切り、なんとか2014年に全面施行にこぎつける。これで保険を新たに手に入れられる人は、3,000万人を越えるとする試算もある。それでも共和党はあきらめない。オバマケア撤廃の法案を、議会に出し続けた。最初は下院は通過するものの、上院で否決されていた。昨年には上下両院で通過したが、大統領拒否権で廃案になっている。
 
 今回大統領選挙と並んで行われた議院選挙の結果、共和党は上下両院で多数をとった。久しぶりの「ネジレ解消」である。まあトランプ大統領が本当に共和党なのかについては疑問があるが、上記のシチュエーションで拒否権を発動することはあるまい。したがって、1/20以降オバマケア撤廃は現実になると思われる。
 
 これに対し民主党は「共和党は撤廃というが、これに替わる対案を出していない」と食い下がっている。単純に言えば、2010年以前の状況に戻してしまえばいいのだから、対案など必要ないかもしれない。ただ既往症で保険に入れない人が多いというのは、少し問題ではないかという意見も出てきているらしい。オバマケア全面撤廃ではなく、部分削除になるやもしれない。
 
 ただトランプ・ツイッターは、The ”Unaffordable” care act will soon be history. と伝えている。大統領就任3ヵ月は、メディアも含めて温かく見守るハネムーン期間だという。僕もその間はトランプ政権のことをじっと見るだけにするつもりだ。そして分断と熱狂の最中にある米国国民がどう反応するかに注目している。
 
<初出:2017.1>