Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

高度プロフェッショナルと労働組合

 「働き方改革」というのは、方向性は正しい。日本のホワイトカラーは生産性が低いというが、昨今の人手不足でブルーカラーまで過重労働を強いられているのが実態である。長くICT導入を働きかける仕事をしてきた僕にとっては、人手不足は朗報である。人手があれば雇用を守るという名目で機械化を拒否する現場が多かったからだ。経営者は合理化をしたいのだが、「労働組合が言うことを聞かないので」機械化の提案はお断り、というケースに何度も出会った。

 電通の新入社員自殺事件や多くのブラック企業での不当な搾取などが表面化して、政府も「働き方改革」に真剣に取り組み始めた。その結果、労働者の権利を確保することを主眼に、

 
 ・労働時間の上限規制
 ・同一労働同一賃金
 ・高度プロフェッショナル制度
 ・裁量労働制の緩和

 などの方向が見えてきた。ところが労働組合の総本山「連合」が高度プロフェッショナル制度容認に傾いたことで、下部組織である各労働組合の反発を買い、これを撤回した後もゴタゴタが続いている。

http://diamond.jp/articles/-/137699?page=2

 金融トレーダーなどの高い専門性を持ち1,075万円以上の年収がある人たちを、労働時間規制に対象から外すというのがいわゆる「高プロ制度」。1秒を争うトレーディングの真っ最中に、「今月の残業時間使い切りましたので、So much for today」というわけにはいかないだろう。僕は、この手の人たちが組合員である必要性すら感じない。

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 労働組合というのは、ひとりひとりでは弱い存在の「自由なる労働者:アダム・スミス」が団結して、資本家に対峙しようというものである。金融トレーダーのような人たちは、トレードの世界から足を洗えばそれだけの年収を確保することは難しいから、業界を限られたという意味で自由なる労働者とは言えまい。トレードの実績とその能力の将来価値によって市場価値が決まるから、それは企業と個人の契約になる。プロと労働組合とは相容れないものだと、僕は思っている。

 企業活動が複雑化して、従業員の求められるものの多様化してきた。大手企業では正規社員であっても、当該年度の業績目標や達成度を評価して当該年度の賞与や次年度の給与を決めている。事実上の年次契約に移行しつつある。こんな時代、労働組合ってどういう意味があるのでしょうね。すでに「連合」の構成員は全雇用者の12%未満だというし。
 
<初出:2017.8>