Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の港湾(5/終)

 へえ、さすがはシンガポールだ。同じことを日本もできるのではないかと考えて、関係者の意見を聞いた。たちまち、反論の雨・あられを浴びることになった。問題点を僕なりに整理してみると、

◇通関にかかる手続き
 確かにNACCSというシステムがあって、デジタル・データを用いて、税関官署、運輸業者、通関業者、倉庫業者、航空会社、船会社、船舶代理店、金融機関等の相互を繋ぐことはできている。納税も効率化されるようになった。しかし、業者の中にはこれに対する投資ができない規模のところもある。

http://www.naccs.jp/

◇港湾会社の運営
 労働組合の力が、非常に強い業界。水先案内人の報酬は高いし、港湾が24時間開けているシンガポールなどとは競争できない。港湾労働者は長く厳しい環境に置かれて来て、現在の労働環境は先達の贈り物と思っている。手放すことなどあり得ない。

◇トラック・クレーン等の機器の接続
 もともと局所最適で通信(例えばトラックのMCA無線)手段を選んできた。業界をまたがって通信やデジタル・データのやりとりをすることなど考えていない。

 総じて見ると、、税関官署、運輸業者、通関業者、倉庫業者、航空会社、船会社、船舶代理店、金融機関等はやはり個別に電子化をしていて、つながることはつながるのだがシンガポールのように全自動でつながってはいないらしい。途中で人手が介在しているようだ。それはそれでチェック機能もあることになるので、いちがいにダメというわけではない。

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 全自動にしてしまうと、デリバティブなどの金融取引でちょっとの刺激で相場が大変動・・・のような事態を招くこともある。しかし日常的な輸出入・物流・関連手続きにおいて、自動化して済むならばその方が社会コストを下げることになるだろうと思う。最後にある関係者が、

「NINJAさんの言うとおりにしたら、港湾から一杯失業者が出るだろう。それを望まない人たちにどう押し付けるのだね」

 と言った。そんなわけで15年前には手を引いた話だが、港湾の国際競争力を考え直す動きもあるっという。グローバル化の進展が進み、TPPをはじめとする貿易自由化論議が盛んになった今、もう一度現状から調べてみてもいいかなとは思う。
 
<初出:2016.9>